連続テレビ小説「なつぞら」 スピンオフ 秋の大収穫祭とよさんの東京物語①

録音スタジオ

スピーカー・島貫『フフフフ フフフ 神宮寺ツトム 貴様の命も終わりだ』。

レミ子『プリンス・デビルマ将軍!』。

島貫『これで 地球は我々のもの。 凍え死ぬがいい! ヌハ ヌハ!』。

レミ子『負けてたまるか…! 雲が乱れ 雨が暴れ 山が怒り 海が荒れても』。 『俺 絶対 ネバーギブアップ!」

松井『デビルマ将軍 あちらを ご覧ください!』。

島貫『ハッ ヌヌ ヌヌヌ! スカイジーン!?』

レミ子『アテンション アテンション…』。 『スカイジーン! ハアッ! アテンション プリーズ!』

とよ「いよっ 頑張れ! 絶対ネバーギブアップ!」

(拍手)

坂場「場面設定は 悪魔帝国が 町に押し寄せてきて 人々が逃げ回る その群衆の中の老婆のセリフです。」

とよ「あ…。」

坂場「どうぞ。」

とよ(小声で)『お前たちに この町は渡さねえ…』。

坂場・スピーカー『ありがとうございます。 画は気にしないで下さい。 ね。 とよさんらしく お願いします』。

とよ「私らしく?」

坂場・スピーカー『では 本番をお願いします』。

とよ(深呼吸)『おめえらに この町は渡さねえ!』。

坂場「オッケーです。」

とよ「オッケーかい? はあ…。」

坂場「ありがとうございます。 思ったとおりです。 これは とよさんにしかできない。」

とよ「もう お世辞はいいから…。」

坂場「お世辞なんかじゃありません。 まっすぐな人柄が伝わってきました。」

咲太郎「とよさん 俺 胸が熱くなりました!」

とよ「咲太郎 もう私は緊張で もう胸が爆発するかと思ったよ。 喉が カラカラだ~!」

レミ子「とよばあちゃん やるじゃない!」

島貫「すげええな ど素人のくせに!」

松井「いっそ 女優になったらどうだい?」

とよ「(むせる声) またまた! いい思い出ができたもね~。」

レミ子「よし 思い出作りに 一杯やる?」

咲太郎「もし お時間あれば うちの事務所で。」

とよ「じゃあ 一杯だけ。」

雪月

雪次郎「(くしゃみ)」

風車プロダクション

レミ子「とよばあちゃん 雪次郎の気持ち 分かった?」

とよ「演劇は 奥が深い…。」

レミ子「へえ~ 深い?」

とよ「そだ。 たったのひと言でも 自分と違う 別世界の人間になれんだから。」

レミ子「ハハ… 分かったような口きいちゃって。」

とよ「はい 絶対 ネバーギブアップ。」

レミ子「おいしい!」

とよ「ハハハ…。 私は あんたの芝居に 心ば わしづかみされた。 いずれ売れるから頑張んな! ぜったい ネバーギブアップ!」

レミ子「いや 売れてるから 私。」

とよ「へ?」

島貫「テレビで映らねえからな 声優は。」

松井「ああ。 少年役といや 土間レミ子。 土間レミ子といや 少年役。 ちょちょちょ… ダーン! これを見なって。」

とよ「何だべ? これは。」

島貫「ファンレター!」

松井「レミ子がやってる 神宮寺ツトム宛てのな。」

とよ「へえ! あんた 大女優なのかい?」

レミ子「まあ はい。」

(ドアが開く音)

とよ「ああ…。」

咲太郎「まだ飲んでたのか。 うちは飲み屋じゃないんだぞ。」

レミ子「ほれ ほれ ほれ。 飲め 飲め。」

咲太郎「とよさん 今日は お疲れさまでした。」

とよ「ありがとう。 あんたも お疲れさま。 こんな時間まで仕事してたのかい?」

咲太郎「はい。 明日 外国映画の吹き替えがあるんですけど 老貴婦人役の女優が 風邪で声が出なくなっちゃって これから 代役を 探さなきゃいけないんです。 」

とよ「代役… 私 やってみるかい?」

咲太郎「いやいや…。」

とよ「水くさいね あんた。 困った時は お互いさまだべさ。」

咲太郎「いや そういう問題じゃなくて…。」

レミ子「いいんじゃない ねえ!」

島貫「おお。」

咲太郎「まあ 確かに いい芝居はしてたけど…。」

島貫 レミ子「いよっ!」

松井「雪月屋!」

レミ子「ネバーギブアップ!」

とよ「旅は道連れ 世は情け。 初代 雪月おかみ あ 小畑とよに 任せておくんなせ~。」

レミ子「よっ!」

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