連続テレビ小説「なつぞら」 スピンオフ 秋の大収穫祭とよさんの東京物語①

咲太郎「こちらこそ 申し訳なかったです 俺の考えが甘かったです。」

とよ「それは違う。 できねえ私が悪い。 あんたの顔に泥を塗って すまなかった。 このとおりだ。」

咲太郎「頭を上げて下さい。」

とよ「咲太郎。」

咲太郎「はい。」

とよ「私を雇ってもらえねえか? 声優として。」

咲太郎「えっ 本気ですか?」

とよ「本気。」

咲太郎「本気で声優に?」

とよ「下働きでも雑用でも 何でもする。 どうか雇ってもらえないでしょうか。 このとおりです!」

咲太郎「とよさん…。」

とよ「咲太郎。」

咲太郎「無理です。」

とよ「なしてだ?」

咲太郎「年齢を考えて下さい。 いくつですか?」

とよ「女性に 年齢を聞くんでねえ。」

咲太郎「家族が許すわけないでしょう。」

とよ「なして限界を決める?」

咲太郎「とよさん…。」

とよ「年寄りは 開拓したらダメか?」

咲太郎「どうして声優を?」

とよ「ここが熱くなっちまった。 雪月を立ち上げた あのころみてえだよ。 私は 声優に挑みてえ。 いろんなこと足りねえのは 百も承知だ。 だから 東京砂漠に骨埋めるつもりで 100倍 努力する。 私 絶対 ネバーギブアップ!」

咲太郎「分かりました。 では こういうことにしましょう。 1週間後に なつの会社が制作する 新作短編アニメのオーディションがあるんです。」

とよ「『2匹のにゃんこす』。」

咲太郎「主人公のケンは レミ子に決まっていて このユキにゃんと バアにゃんの役を 募集してます。」

とよ「これを 私に受けろと?」

咲太郎「期限は1週間! とよさんが受かれば 役者を続ける。 落ちたら すっぱり諦める。 丁か半か。 いかがでございましょう?」

とよ「張った!」

咲太郎「よござんす! ハハ… ちゃんと家族には話して下さいよ。」

とよ「だな。 ハハハハハ…。」

(拍手)

レミ子「やったじゃないですか。」

とよ「師匠 私に稽古をつけて下さい!」

レミ子「師匠!?」

とよ「お願いします。 師匠しか頼れる人がいねえんです。 師匠 師匠…。」

雪月

妙子「お義母さん 正気ですか…?」

とよ『正気。』

妙子「無理ですよ 声優なんて。」

とよ『絶対 ネバーギブアップ!』

妙子「絶対 ネバーギブアップ!じゃありませんよ。 なっちゃんにも迷惑でしょう。」

とよ『それなら大丈夫だ。 なっちゃん。』

なつ『あ… 大丈夫です。 気を遣わないで下さい。』

妙子「だからって お義母さん もう若くはないんですよ。 いくら気力があったって 体が ついていきませんよ。」

とよ「これで あんたも腹がくくれるな。」

妙子「ちょっと お義母さん!」

雪次郎「ばあちゃん なして声優なんて?」

雪之助「分かんね。 分かんねえけどよ あのおふくろのことだ 何か考えあるはずだべ。」

夕見子「私たちが あれだけ反対しても 東京行くなんて 変ですよね。」

妙子「ねえ 私 明日 迎えに行こうかな。」

雪之助「おい 迎えって何よ 縁起でもねえ… 大体… 店どうすんだ? 店。」

夕見子「だったら とよばあちゃんのいない間に 私と雪次郎に 店任せてもらえませんか?」

妙子「ええ?」

夕見子「前から雪次郎と話してたんですよ。 ね。」

雪次郎「ああ… うん うん。」

夕見子「もっと多くの人たちに 雪月を アピールできる方法はないかって。」

雪次郎「そう。」

夕見子「観光ブームで 新規のお客さんが増えてるし チャンスだと思うんですよ。」

雪次郎「うん。」

妙子「う~ん… したら 暫定的に 私が おかみ代理の立場で 発言させてもらうとするなら… 2人に任せます。」

雪次郎「よし! じゃ 早速 新作の菓子作るべ。」

夕見子「うん 私も デパートの営業さんに話してみるわ。」

雪之助「はあ…。 雪見 雪見… 宿題終わったかい? じいちゃんと一緒に 風呂入るべ…。」

坂場家

リビング

優「これ ママのアニメ?」

なつ「うん。」

坂場「本当に この声優のオーディションを 受けて下さるんですか?」

とよ「バカみてえだろう?」

坂場「いやいや 大歓迎です。 この映画は 猫が大事な役で 人間と同じリアリティーが必要なんです。」

とよ「はあ~。」

なつ「とよばあちゃん 本当は 何か 帰りたくない理由があるんじゃない?」

とよ「なっちゃん 私は 老い先長くないべ。」

なつ「何さ そったらこと急に。」

とよ「それが現実だ。 あの泰樹も 年には勝てんかった。 雪月は こんな年寄りに 頼ってるようじゃダメだ。 これからの雪月を 若いもんたちが見つけていかねえと。 そこに私がいたら お邪魔虫だよ。 なっちゃんには 迷惑かけるね。」

なつ「いや そんなことないよ。 まあ私も こんなふうに とよばあちゃんと ゆっくり話せて うれしい。」

坂場「僕も とても うれしいです。」

とよ「2人とも ありがとうね。」

優「優ちゃんも うれしい!」

とよ「あら 優ちゃんも ありがとうね。」

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク