とよ「お先に 頂きました。」
なつ「は~い。」
とよ「すごいね なっちゃん。 うちでまで仕事して大変だ。」
なつ「すいません 今日中に仕上なくちゃいけなくて。」
とよ「いいさ 気にしないで。 はあ…そんなふうにして アニメーションっていうのは描くのかい。」
なつ「はい。 私たち アニメーターは この紙 一枚一枚に いろんな客ターの表情 動き 人生を描いていくんです。」
とよ「はあ…。」
なつ「そこに 最後に命を吹き込んでくれるのが 声優さんなんですよ。」
風車プロダクション
レミ子「早口言葉の『外郎(ういろう)売り』 一日で間違えずに 口上できるようになって下さい。」
とよ「これを 一日ですか…?」
レミ子「『拙者親方と申すは 御立合の中に 御存知のお方もござりましょうが お江戸を立って二十里上方 相州小田原一色町をお過ぎなされて 青物町を登りへお出なさるれば』以下省略。」
とよ「師匠 すげえです!」
レミ子「『外郎売り』は 発声技術も計算されてるから アクセントも矯正できるのよ。」
とよ「はあ~。」
レミ子「とりあえず 第三段まで 明日 テストするわよ。」
とよ「ほう!?」
レミ子「オーディションまで1週間しかないの。 できないなら諦めなさい。」
とよ「私 絶対 ネバーギブアップ!」
レミ子『絶対 ネバーギブアップ!』
とよ『拙者親方と申すは御立合…。』
とよ「薫風喉候(のんど)より来たり 口中薇涼(こうちゅうびりょう)…』。
とよ『茶立ちょ ちゃっと立ちょ 茶立ちょ』。
光子「ありがとうございます。」
とよ「どういたしましたちょ 立ちょちょ ああ! 『そりゃそりゃそりゃ そりゃ廻って来たは 廻って来るは…』」。
レミ子『絶対 ネバーギブアップ!』
妙子<そして 次の日>
とよ「『拙者親方と申すは御立合の中に 御存知のお方もござりましょうが お江戸を立って二十里方 相州小田原…。 お茶立ちょ茶立ちょ ちゃっと立ちょ茶立ちょ 青竹茶筅で お茶ちゃと立ょ』。」
レミ子「…。」
とよ「師匠…。」
レミ子「合格。 一日で よくここまで上達したわね。 どんな執念?」
とよ「はあ~ よかった。 もう 師匠ってば驚かさないで下さいよ。」
妙子<一方 そのころ 雪月では…>
雪月
夕見子「ありがとうございました。」
雪次郎「ありがとうございました。」
妙子「お待たせしました。 幸福サンシャインば~むです。」
「かわいい。」
妙子<若い2人による雪月改革が功を奏し 2代目おかみも 鼻高々でございます>
「おいしい! 早く食べて。」