風車プロダクション
レミ子「読み合わせの練習 始めるわよ。」
とよ「よろしくお願いします。」
レミ子「ユキにゃんの声は 私がやるわね。 『全く 遅いお目覚めね。 早くミルク頂戴。 ウフフ 驚いた?』。 ちょっと どうしたの?」
とよ「師匠 たまげました。 色っぽいですね!」
レミ子「本当? 『ウフフ 驚いた?』。」
とよ「色っぽい たまげた~!」
レミ子「やだ もう…。 はい はい はい…。」
とよ「ああ…。」
とよ『女は 心が大事』。
レミ子『猫に 女 語られたくないわよ』。
とよ『あんただって 猫でない』。
レミ子「なまってるわ。」
とよ「あっ ああ…。 気持ち入ると どうしても なまるんです。」
レミ子「雪次郎と一緒ね。」
とよ「もう一回 お願いします!」
レミ子「オッケー。」
(おなかが鳴る音)
レミ子「あっ。」
とよ「師匠…。」
(おなかが鳴る音)
とよ「あ…。 あっ こんな時間まで すいません。」
レミ子「あ いいんです。 どうせ 帰っても一人だし 待ってる人もいないし。」
坂場家
リビング
レミ子「お邪魔しま~す。」
とよ「はい。 すまないね また 台所借りちゃって。」
レミ子「私も お邪魔しちゃって ごめんね。」
なつ「いいの いいの。 優も喜んでるから。」
とよ「したら…。」
一同「頂きま~す。」
レミ子「じゃあ いっちゃいます。 おいしい!」
とよ「ハハハ よかった。 でも 師匠のオムライスには かなわねえわ。」
レミ子「ううん。」
優「オムライス? 優ちゃんも食べたい!」
レミ子「じゃあ 今度 作ってあげるね。」
優「うん!」
とよ「今日 気付いた! 師匠は いい女だ!」
レミ子「何よ 今日 気が付いたの?」
とよ「師匠は 女役もいけると思います。」
レミ子「ああ それは無理よ。」
とよ「なして? こんな女らしいのに。 やりたくないんだべか? 女役。」
レミ子「そりゃ やりたいわよ 女なんだから。」
とよ「したら…。」
レミ子「いい? 私は 少年役だから仕事がもらえてるの。 私の女役なんて 誰も興味ないわよ。」
とよ「え~… そうだべか?」
なつ「レミさんには ファンが多いから。 今の『鉄戦士スカイジーン』の神宮寺ツトム 優も大好きだもんね。」
優「アテンション プリーズ!」
(笑い声)
レミ子「ありがとう。」
なつ「今の風車プロは レミさんなしでは 考えられないだろうしね。」
レミ子「そういうこと。 この話題は お~しまい!」
とよ「あんた それでいいんだべか? 自分のやりたいことに正直になれなくて 苦しくないのかい? 行くべ。」
レミ子「どこに?」
とよ「風車プロに決まってる。」
レミ子「いいって。」
とよ「よくない! 私も一緒に行って 咲太郎に直訴してやる。 戻るべ。」
レミ子「いいんです!」
とよ「なして? やりたいんだべ?」
レミ子「声の仕事が やっと見つけた居場所なんです。 風車プロのみんなが 私の家族なの。 その場所を失いたくないんです。」