佳代「あなたが どれだけ料理が好きか 私が 一番よく分かってる。 もう一度 料理人になってください。」
矢作「オーナー 申し訳ありませんでした!」
房子「あなた まだ若い いくらでも やり直せる。」
矢作「ありがとうございます。」
二ツ橋「お久しぶりです!」
矢作「シェフ…。」
二ツ橋「まずは 食べましょう。 暢子さんの 沖縄そばです。 私も お手伝いしました。」
佳代「沖縄のそば?」
暢子「はい。」
矢作「頂きます。」
佳代「おいしかった。 ごちそうさまでした。」
矢作「まあまあだな…。」
佳代「あなた。」
矢作「カツオと豚の出汁は悪くないが 麺は もうちょっと細い方がいい。 俺なら あと1ミリ いや2ミリは攻める。 昔 初めて食べた時よりは いくらかマシかな。」
暢子「覚えていてくれたんですね あの時に味。」
回想
暢子「沖縄のそばです。」
矢作「沖縄?」
長山「これが そば…。」
矢作「うめえ!」
回想終了
暢子「あの時 一番最初に おいしいって言ってくれたのは 矢作さんでした。 矢作さん うちが お店をやるためには お店の味を任せられる 料理人が必要です。 矢作さんは 料理が好きで好きで まっすぐに向き合える人です。 うちには 矢作さんの力が必要なんです。 一緒に 働いてください。」
矢作「俺は…。 でも もう…。」
二ツ橋「矢作さん。 包丁 見せてください。 いつも 持ち歩いていますよね。」
矢作「軽蔑してますよね シェフも。」
二ツ橋「あなたが 悪い人間でないことは オーナーをはじめ みんな よく知っています。 だけど あなたは 料理人として道を誤り 信頼を失ってしまった。 その重たい荷物は あなたが 料理人を続けていく限り ずっと 背負い続けなければなりません。 その覚悟を 持てますか? その覚悟を持てるなら いつか きっと 失った信頼を取り戻せるはずです。」
矢作「オーナー シェフ…。 このお礼は いずれ必ず。」
房子「待って。 長い間 ご苦労さまでした。」
(ドアベル)
二ツ橋「暢子さんの言うとおり 矢作さんの包丁は きちんと研いで 手入れされていました。 料理人を諦めていなかった証拠です。」
暢子「三郎さんが言っていました。 矢作さんは 鶴見に来てからも 何軒も飲食店を回って…。 だけど 身元を保証してくれる人も いなかったから どこも雇ってくれなかったそうです。」
回想
矢作「下働きでも何でもします。 もう一度 料理がしたいんです!」
回想終了