連続テレビ小説「ちむどんどん」49話「あの日、イカスミジューシー」

食堂

暢子「うん! ウフフフ…。 おいしい。 ウフフフ。」

二ツ橋「どう?」

暢子「うん!」

暢子「だ~! おいしかった~! ごちそうさまでした!」

二ツ橋「新しい看板メニューの方は どうです?」

暢子「ああ… それが あんまり集中して考えられなくて。」

二ツ橋「妹さんのことで?」

暢子「今日 検査の結果が出るんです。」

二ツ橋「私の父も 今 療養中です。 母は この機会に実家に帰って 店を継いでくれと。」

暢子「それで 決心したんですね。」

二ツ橋「私が辞めたあと オーナーのことを くれぐれも よろしくお願いします。」

暢子「えっ? 何で うちに?」

二ツ橋「皆さんにも 言っておきたいんですが なかなか チャンスがなくて。」

暢子「よろしくって 言われても 具体的に どうすれば?」

二ツ橋「オーナーは 誤解されやすいタイプです。」

暢子「誤解?」

二ツ橋「お客様にとって よりよい店にしたい という思いがあふれ 必要以上に スタッフに厳しくしたり 冷たい態度を取ったり。 心の中は 愛情であふれているのに その愛を 素直に 表現できない場合が多い。 私は オーナーほど美しく 優しく 知性と気品に満ちあふれた すばらしい女性を ほかに 知りません。」

暢子「好きなんですか?」

二ツ橋「はい?」

暢子「二ツ橋さんは オーナーのことが 好きなんですね?」

二ツ橋「今の話の どこを どう聞けば…。」

暢子「どこを どう聞いても 好きだとしか思えません。」

二ツ橋「昔 そんな後輩がいました。」

暢子「後輩?」

二ツ橋「長年 オーナーに仕え 苦楽を共にするうちに 尊敬が 愛情に変わった。」

暢子「それで?」

二ツ橋「10年前 勇気を出して 清水の舞台から飛び降りるつもりで 思いを告げた。『オーナー 私と 結婚していただけませんか』。」

暢子「プロポーズしたのは…。」

二ツ橋「私の 後輩です。」

暢子「そしたら オーナーは?」

二ツ橋「『悪いけど あなたの気持ちには 応えられないわ』。『なぜですか?』。『忘れられない人がいるの』。「ええっ? 一体 どこの誰です?』。『その人とは 結ばれない運命 一生 添い遂げることはできないの』。」

暢子「結ばれない運命?」

二ツ橋「オーナーが忘れられない相手は 別の女性と結婚なさってます。」

暢子「アイヤー…。」

二ツ橋「後輩は その相手を突き止め 直接 話をしました。」

暢子「そしたら?」

二ツ橋「相手の男は『悪いのは俺だ。 あの人のこと くれぐれも よろしく頼む』。 だから 私は…。」

暢子「私は?」

二ツ橋「いや その 後輩は オーナーに『今までどおりの関係で結構ですからこれからも おそばで働かせてください』と お願いしたそうです。」

二ツ橋「バカな男です。 きっぱり諦めて店を辞め 新しい道を選べばよかったのに。 いつまでも 未練がましく…。 心のどこかで ひょっとしたらという 淡い期待を捨て切れず…。 身の程知らずな 醜い男。」

暢子「その話は 二ツ橋さん…。」

二ツ橋「後輩の 話です。」

暢子「えっ ちょっと待って…。」

回想

二ツ橋「全部 あんたが悪いんだ!」

回想終了

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