レストラン・フォンターナ
厨房
桃木「味付け どう?」
暢子「うん ばっちりです! ありがとうございます!」
山辺「3番様 今日は 歯の治療中だそうで かたいものは できればない方がと。」
暢子「分かりました。 ありがとうございます。」
山辺「どういたしまして。」
長山「手 空いたから 洗い場 やっておく。」
暢子「あっ うちが…。」
長山「いいから。」
暢子「ありがとうございます。」
江川「誰か 5番にドルチェ出せるか?」
桃木「僕 いけます!」
江川「おう ありがとう。」
矢作「代行 これが済んだら 発注やっておくから。」
暢子「ありがとうございます。 3番様 お願いします。」
山辺「はい。」
暢子「あっ 玉島さん ちょっと 急ぎでお願いします。」
玉島「はい。」
暢子「江川さん これ 片づけておきますね。」
江川「ありがとう。」
ホール
房子「いらっしゃいませ。 記事 出ましたね。」
愛「今日の夕刊に記事が載った途端 編集部にも営業部にも 称賛の電話が 何本もかかってきたんです。『自己批判を恐れない勇気は ジャーナリストとして あるべき姿勢である』って。」
房子「拝見しました。 いい記事でした。」
和彦「ありがとうございます。 ただ 全ては…。」
房子「匿名の投書のおかげでしたね。」
和彦「えっ…?」
田良島「いつもいつも お知恵を頂きまして…。」
愛「えっ… どういうことですか?」
和彦「まさか 田良島さんが?」
田良島「えっ? こんなことをするのは 東洋新聞の一員として問題がある。 俺は そんなやつは認めたくない。 まっ 俺は もともと 俺自身のことは あんまり認めてないからな。」
愛「じゃあ 田良島さんのおかげ?」
田良島「いやいや アイデアは オーナーから頂きました。」
房子「ひねくれ者のくせに 正直なんだから。 フッ…。 どうぞ ごゆっくり。」
田良島「はい。 」
田良島「言っただろ? 俺は お前のことは 全く疑ってないって。」
オーナー室
房子「二ツ橋さんが戻るまで 正式に シェフ代行を命じます。」
暢子「いいんですか?」
房子「質問はなし 私の命令は絶対。」
暢子「はい。」
房子「とにかく 自分らしい シェフ代行を目指しなさい。」
暢子「はい。 結局 うちは うちらしくやるしかない。 ということが よ~く分かりました。」
房子「ご苦労さま。 早く帰りなさい。」
暢子「あっ うちは まだ 来週からのメニューを考えないと。 ズッキーニを調達することが できなかったので。」
房子「ズッキーニなら 納品されたでしょ?」
暢子「えっ? いつ? 誰が?」
房子「会わなかった? 八百鶴の。」
暢子「智が? あっ…。」
(ドアが閉まる音)