比嘉家
(三線の音)
賢三「もうすぐ 那覇に出るけど キビ倒しまでには戻るから。」
優子「出稼ぎに?」
賢三「いろいろ お金もかかるし。 銀行の借金も。 保証人になってもらってる叔父さんに 迷惑かけるわけにもいかないし。」
優子「無理し過ぎたかねえ。 家建てたのも キビ畑買ったのも。」
賢三「また いい時も来るよ。」
優子「無理しないでよ。 健康が 一番大事だからね。」
賢三「うん。」
賢三「何の悩みもない顔して寝てからに。」
優子「これから たくさん悩むさ。 うちらが来た道と一緒。」
賢三「いつか 話してやらんとな 昔のこと。 子供は不思議だな。 何でもしてやりたいのに 肝心なことは何もしてやれない。」
優子「だからよねえ。 うちの親は どんなしてかねえ。 今のうちを見たら 何て言うかねえ…。」
♬~(三線)
『てぃんさぐぬ花や 爪先に染みてぃ 親ぬ寄し事や 肝に染みり 天ぬ群星や 読みば読まりしが 親ぬ寄し事や 読みやならん 親ぬ寄し事や 読みやならん』
砂川とうふ店
暢子「おはよう 智!」
智「呼び捨て禁止!」
玉代「暢子ちゃん おはよう!」
暢子「おばさん 寝てなくていいわけ?」
玉代「診療所の先生が もう大丈夫って。」
暢子「よかったねえ。」
玉代「智 今日から行くから よろしくね。」
暢子「うん。」
比嘉家
賢三「頂きます。」
一同「頂きま~す。」
賢三「昨日のレストランと どっちおがおいしい?」
暢子「どっちもおいしい。」
賢三「ハハハハ…! 暢子が食べるの見てたら こっちまで幸せさぁ。」
暢子「みんなで食べるから おいしいわけよ。」
優子「お父ちゃんが出稼ぎに出たら さみしくなるねぇ。」
暢子「お父ちゃん 帰ってきたら うちが そば作ってあげる!」
賢三「おお。 それは楽しみだな。 ハッハッハ…!」