暢子「角力大会か~。 もう そんな季節なわけ?」
和彦「結局 一度も参加できなかったな。」
順次「年に一度の 県人会の遠足だから。 この角力大会は 遠足の余興みたいなものさ。」
和彦「2年連続で 智が優勝してるんですよね?」
順次「3連覇確実って 自分で言ってた。」
暢子「んっ アイ。 13日の日曜日 うち 見に行ける! 休みだ!」
和彦「えっ じゃあ 僕も 鶴見最後の思い出に参加してみようかな。」
暢子「角力大会に?」
和彦「うん。」
暢子「しんけん? 勝てるわけないさぁ。」
和彦「勝ち負けの問題じゃないよ。 参加することに 意義がある。 そういえば 昔 やんばるの浜で 教えてもらったな。」
回想
(声援)
回想終了
暢子「あのころは 楽しかったね。 もちろん 今も楽しいけど。 それにしても 和彦君 デージ弱かったよね。 ハハハッ…!」
和彦「笑い過ぎ!」
暢子「本当に弱かったんですよ。 もう ニーニーに すぐ て~んって!」
(笑い声)
暢子「アイ 怒った? ごめん。」
和彦「ううん。 じゃあ 行ってきます。」
トミ「行ってらっしゃい。」
(戸の開閉音)
レストラン・フォンターナ
ホール
西郷「学校は 楽しい?」
めぐみ「うん。」
房子「西郷様 いらっしゃいませ。」
西郷「今年も この日を楽しみにしていました。」
厨房
房子「西郷様のお料理は?」
暢子「あっ 間もなくです。」
房子「違う それじゃない。」
暢子「えっ? でも…。」
二ツ橋「あっ 失礼しました。 暢子さん 西郷様のお料理を担当するのは 初めてでしたね。」
暢子「ん?」
ホール
(笑い声)
房子「お待たせしました。 ポルチーニのリゾットでございます。」
西郷「頂きます。」
めぐみ「頂きます。 ん~ やっぱりおいしい!」
西郷「温かくて 優しい味。 いつも 心が安らぎます。」
房子「どうぞ ごゆっくり。」
厨房
暢子「年に一度の お客様?」
二ツ橋「毎年 必ず お嬢様の めぐみさんのお誕生日に ご家族でいらっしゃる 特別なお客様なんです。」
暢子「そうだったんですね。」
二ツ橋「5年前に 奥様が 病気で亡くなられてからは お二人で。 奥様が 最後にいらした時 たまたま オーナーが 材料を手に入れたので お出ししたのが ポルチーニのリゾット。」
二ツ橋「まだ 日本では 簡単には手に入りませんから。 その時に 奥様が大変お気に召されて。 それから毎年 年に一度 西郷様とお嬢様のためだけに 材料を仕入れているんです。」
暢子「一組のお客様のために?」
二ツ橋「『フォンターナは そういう店でありたい』と。 どんなに 時が過ぎようと 決して 色あせない 思い出の味 思い出の場所を 提供し続ける店で あり続けたいと。」
暢子「思い出の味 思い出の場所…。」