そして 約束の日曜日が やって来ました。
青柳家
玄関前
和彦「着いた。 ここ。」
和彦「母さんは 昔からオルゴールと 詩人の中原中也が好きで。」
暢子「あ~! デージすてきな お母さんさ。」
和彦「暢子は 詩なんて読まないでしょ。」
暢子「そんなことないよ。 五七五のとか。」
和彦「それは 俳句。」
暢子「アイヤー… 緊張してきた。」
リビング
♬~(オルゴール)
重子「思ひ出ては懐かしく、 心に沁みて懐かしく、 吾子わが夢に入るほどは いつもわが身のいたまるゝ」
玄関
(ドアの開く音)
和彦「ただいま。」
波子「お坊ちゃま お久しぶりでございます。」
和彦「ただいま。 家政婦の 波子さん。」
暢子「初めまして 比嘉暢子でございます。」
波子「どうぞ。」
リビング
波子「奥様。」
重子「和彦の母 重子でございます。」
和彦「母さん こちら 電話で話した…。」
暢子「私が… あっ あっ サーターアンダギーです。」
重子「さーたー あんだぎー… さん?『さーたー』が名字?」
和彦「違う。 彼女は 比嘉さん。」
重子「ひが あんだぎー?」
暢子「あっ 違います! あの 私は サーターアンダギー… あっ じゃなくて…。 こっちが お土産のサーターアンダギー。 私の名前は 比嘉暢子です。」
重子「フフッ 楽しいお嬢さんね。」
暢子「あっ…。」
和彦「母さん 電話で言ったとおり 僕は 暢子さんと…。」
重子「許しません。 結婚は 許しません。」