喫茶・サーカス
マスター「いらっしゃいませ。」
和彦「昨日は ごめんなさい。」
重子「座ったら?」
重子「今回のことで よく分かったでしょ? 今は 違うと思っても 結局 母さんの言うとおりにして よかったと思う日が来る。 ずっと仕事を続けたい女性と結婚して 幸せになれる? 家事や育児は 誰がやるの? 仕事と両立するわけがない。 あなたは だまされてる。」
和彦「僕は 母さんみたいな奥さんが 欲しいわけじゃない。 むしろ そんな女性は嫌だ。 暢子には 夢があり やりがいのある仕事もしてる。 僕は 暢子の生き方を肯定してるし 結婚しても そのままの暢子で いてもらいたい。 暢子の人生は キラキラ輝いていて いつも充実してる。」
重子「私の人生は つまらないのね。」
和彦「そういうことを言ってるわけじゃ…。」
重子「母さんの人生は 否定するのね。」
(ドアが閉まる音)
東洋新聞
学芸部
和彦「ちゃんと 謝るつもりだったんだけど もういいよ。 あの人の言葉を借りれば 住む世界が違うんだ。」
暢子「『あの人』とか 言わないで。 手紙を書いたら? 手紙なら 伝えられるかもしれないさぁ。」
和彦「僕らの子供の頃の文通とは…。」
暢子「諦めないで。 お願い。」
和彦「暢子…。」
暢子「うまく言えないけど 和彦君が諦めたら 和彦君のお母さんも悲しいんだはず。 だって うちたちは 同じ世界に住んでるんだのに。」