回想
(鐘の音)
「平良三郎君の武運長久を願って 万歳!」
一同「万歳! 万歳! 万歳! 万歳! 万歳!」
(拍手)
三郎「行ってくる。」
多江「はい。」
三郎「家のことは 頼んだよ。」
多江「はい。」
回想終了
沖縄料理店・あまゆ
三郎「俺が シベリアから帰ってくるまで 多江は たった一人で 家業を守り 県人会や 親戚の面倒まで見てくれてた。 今の俺があるのは 全部 多江のおかげ。 昔も今も 最高の女房だよ。」
和彦「その後 房子さんとは…。」
三郎「銀座で レストランやってるって うわさは聞いてた。 俺のこたぁ 憎んでんだろう。 合わす顔ねえよ。 償いのつもりで あの人が 幸せでありますようにって願かけて 大好きだった酒を断った。」
和彦「それで ずっとお茶を…。」
レストラン・フォンターナ
房子「あの人は 私を憎んでるはず。 今更 合せる顔もないし 多江さんとあの人に 迷惑をかけたくない。」
暢子「だけど このままじゃ…。」
房子「この話は これで終わり。 今日 電話をしたの。」
暢子「ん?」
房子「明日の昼 権田さんが来ます。」
暢子「えっ 待ってください…。 オーナー 明日は みんなに休めって。 えっ 一人で会うんですか? そんなの駄目です! うちも来ます。」
房子「別に あなたがいてくれなくても…。」
暢子「何もできなくても います! いさせてください。」
あまゆ・2階
暢子「三郎さんが そんなこと言ってたわけね。」
和彦「うん。」
暢子「2人とも 同じようなこと…。」
和彦「思いは 擦れ違ったまま。 お互いに 憎まれてると 思い込んでるってことか。 はぁ…。」
沖縄料理店・あまゆ
順次「(鼻歌)」
(戸の開閉音)
暢子「行ってきます。」
多江「暢子ちゃん。」
暢子「おお 多江さん。」
多江「披露宴の衣装の件で 時間ある?」
暢子「アキサミヨー。 ごめんなさい。 これから ちょっと…。」
多江「あら…。」
トミ「暢子ちゃん 今月分の家賃なんだけど…。」
暢子「アキサミヨー。 今 持ってきますね。」
順次「えっ…? アイヤー。 このクーブイリチー もう 痛んでしまってるかな。」
トミ「え~?」
多江「あっ さすがに無理だと思う。 もう 諦めるしかないわね。」