一風館
ダイニング
容子「はあ…。」
真理亜「ついていけない 私には 理解不能。」
恵里「そうですか?」
みづえ「運命ねぇ なんか すてきね。」
恵里「そうですよね。」
容子「運命って 言われちゃうとねぇ。」
恵達「また それか。」
柴田「僕は…。 僕は 賛成です。 恵里さん 向いてると思いますよ きっと。」
恵里「え? 本当ですか? そう思います?」
柴田「はい。」
容子「向いてるっていうのは 私も そう思うけどね。」
恵里「え? やっぱりですか? うれしいなぁ。」
容子「うん まあねぇ。」
柴田「いいですね 白衣の天使 ピッタリです。 僕 応援します。」
恵里「ありがとうございます。 白衣の天使か…。 いや 参ったな。あ。」
真理亜「スケベ!」
柴田「え? なんてことを言うんですか そんなんじゃ ないですよ。 僕はですね 北海道の別海町という場所で 育ったんです。」
柴田「家は 牧場でして 母親が ケガで ずっと入院していた…。 町の中央病院に バスで 1時間半ぐらいの所で 冬になると 大変なんです。 でも 子供だから母親に会いたい。」
恵里「はい。」
柴田「やっぱり 行くわけです 吹雪の中。その病院には 優しくて きれいな 看護婦さんがいて あ 典子さって 松下典子さんて 看護婦さんがいて 僕が病院に行くと 必ず あったかいココアをいれてくれる…。 僕の初恋の人でした。」
恵里「そうですかぁ。」
柴田「はい 母が退院する時も『いつでも ココア飲みにおいで』って『いつでも 遊びにおいで』って 言ってくれたんですよ。」
恵里「へえ…。」
容子「で 行ったの? また。」
柴田「はい もちろうん 行きました。」
容子「え?」
真理亜「普通 行かないわよねぇ。」
容子「そうよねぇ。」
柴田「え そうなんですか?」
恵里「で 初恋は どうなったんですか。」
柴田「実は その人 結婚していることが 分かったんです。 ショックでした。」
容子「初恋が 不倫だったんだ。」
柴田「そういう言い方をすると なんか。」
真理亜「幸せには なれないわね きっと。」
柴田「そうなんですか?」
真理亜「だいたいさ 疑問なんですけど 何で 私たちは こんな話をするの。 家族でもないのに まるで 家族会議だわこれじゃ…。」
みづえ「いえ 家族みたいなものですよ。」
真理亜「そういうアパートじゃないでしょ?」
恵達「あの すみません 家族なら ここに。」
恵里「恵達!」
容子「あら?」
みづえ「お帰りなさい。」
恵達「どうも ただいま。」
恵里「あんた いつ 戻ってきたの? ずっと そこに居たの? いつから。」
恵達「『看護婦になりたいんです』って 言った時から。」
恵里「あ そうなんだ。 な~んだ ま そういうことなのよ。」
恵達「『そういうことなのよ』じゃない。 本当に 皆さん すみません。」
恵里「何で あんたが謝るの? いいから 部屋へ行こうか。 姉え姉え ホラ。」
恵里「チョット 何よ。」
恵達「いいから!」
恵里「すみません。 お先に。」