連続テレビ小説「あまちゃん」101回「おら、悲しみがとまらねぇ」

スナック・梨明日

春子「アキが?」

ヒロシ「はい ウニ丼食って 泣いてました。」

大吉「無理ねえべ。 夏ばっぱのウニ丼の ふっくら感は日本一だじゃ。」

ヒロシ「安部ちゃんの 全然 ふっくらしてないウニ丼ですよ。」

大吉「だとすると ホームシックかもな。 最後にしゃべったの いつ?」

春子「え~ 声は いつだろ? 随分しゃべってないな。 ユイちゃんは?」

ユイ「そういえば 最近 メール打っても返ってこないです。」

春子「ちょ… ちょっと詳しく聞かせて。」

菅原「寮さ行ってきたんだべ? どったら所だった?」

ヒロシ「それが 女子寮とは名ばかりの 何か 古い木造のアパートで 風呂もねえ トイレは共同で…。」

一同「じぇじぇ~。」

ヒロシ「4畳半1間の部屋さ 2段ベッド置いて 3人で寝てました。」

まごころ第2女子寮

回想

アキ「おら ママみでえな歌手に なりでえ。 ちゃんと 一人さ届く 歌っこ歌った ママみでえな歌手に なりでえんだ!」

鈴鹿「自分の果たせなかった夢を 娘に かなえてほしいのよ お母さん。」

甲斐「春ちゃん 娘に 夢を託したんだな。」

春子♬『来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー』

アキ「かっけえ…。」

回想終了

(ノック)

アキ「眠れません。 水口さん…。 ねえ 水口さん おら やっぱり辞めだぐねえです。 もっと みんなと いたいです。 踊ったり 歌ったりしてえです。 アイドルさ なりてえです! 水口さん。 水口さん!」

アキ「腹減った…。」

春子「こんばんは。 天野春子です。」

アキ「…知ってます。 水口さん 水口さん! 水口さん!」

春子「お化けじゃないよ! 死んでないし私 生きてるし! 駅前で スナックやってるし 時給1,000円で。」

アキ「そうか… そうですよね。 何か飲みます? 水口さんの缶ビールが…。」

春子「ごめんなさいね。」

アキ「え?」

春子「デビュー決まってたんでしょ? せっかく いいところまで来てたのに 私のせいで…。」

アキ「いえいえ そんな 気にしねえで下さい。」

春子「私のせいで 太巻に意地悪されて かわいそう! あいつ ちっちゃいよね 器が。 ハハッ 全然 太くないの。 細巻き? ハッハッハッ 細巻き! ハッハッハッハッ! うあまい事 言ったな 今。 ハッハッハッ!」

アキ「めんこいな。」

春子「…やだ!」

アキ「目が パッチリしてて 髪の毛クルンクルンで 親子とは思えねえ。 おら パパに似ちゃったのかな。」

春子「ブスだもんね。」

アキ「え!?」

春子「奈落だもんね。 繰り上げ当選のブスだもんね。」

アキ「ブスとか言うな! 親子だからって! いや 親子だからこそ!」

春子「おわびに歌います。」

アキ「じぇじぇじぇ! マイペースだな…。」

♬~(『潮騒のメモリー』)

アキ「春子さん せっかくだけど ここ 住宅街だし 夜も遅いし…。」

(引き戸が開く音)

アキ「え?」

鈴鹿「とうとう見つけたわよ!」

アキ「じぇじぇじぇじぇ!?」

鈴鹿「やめて! 歌わないで!」

アキ「鈴鹿さん 駄目!」

鈴鹿「私の歌! 私の『潮騒のメモリー』よ!」

春子「ハハハハッ!」

鈴鹿「逃がすもんか! 返して! 私の歌 返して! アタッ! 段差が… 段差が怖い! ちょっと手伝いなさいよ! 天野さ~ん!?」

春子「ハハハハッ!」

アキ「やめで! 2人とも やめで!」

(携帯の着信)

アキ「ママ…。」

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