連続テレビ小説「あまちゃん」125回「おらたちの大逆転」

黒川「ママには『最終選考に備えて セリフ合わせをしていた』という事に しておく。 いいね?」

水口「一応 納得してくれたみたいです。」

黒川「ああ よかった。」

水口「…にしても 油断も隙もねえな 一般男性はよ。」

アキ「おらが誘ったんだ。 先輩は悪くねえです。」

黒川「アキ…。」

アキ「女優である前に アイドルである前に おら 18歳の女子だ。 好きな人がいて 一緒にいでえと思ったり その人のために 仕事頑張っぺと思うのが 悪い事か?」

水口「いや 悪くはない。 そして 誰にも見られない 安全な場所に ここを選んだのは 考えたなと思う。 要するに 君にとっては 種市君が アイドルなんだな。」

アキ「あ… そうがもすんね。」

水口「そのアイドルに もし好きな人がいたら どうする?」

アキ「…やんだ。」

水口「そのアイドルが もし ほかの誰かに夢中で 君の事が見えてなかったら どうする?」

アキ「やんだ やんだ! その設定 リアルすぎて 超やんだ!」

水口「ユイちゃんで経験済みだもんな。」

種市「ちょっと 水口さん。」

水口「失恋だよ。 要するに アイドルが 一人の男と恋愛すると 100万人のファンが失恋するんだ。 それが アイドルなんだよ。」

種市「それが どうした! 俺が一人で 100万人分 幸せにしてやる! 100万倍の男になる!」

水口「うるせえし 論点ずれてる! 何だ 100万倍の男って… バカか。」

種市「あ… すいません。」

水口「どうします? お父さん。」

黒川「え?」

水口「いや 黙ってるから 何か考えてるのかなと思って。」

黒川「うん。 全然違う事 考えてたよ。 僕が 春子さんと つきあったのはね…。」

水口「ちょっと! 全然違うな それ。 今 話す事ですか?」

黒川「ごめん。」

種市「聞きたいです。」

黒川「あっ そう。 僕にとっては 春子さんが アイドルだったんだ。 偶然 2度 いや 3度 タクシーで拾って もう 春子さんは 歌手を諦めて 地元に帰ろうとしてたんだけど…。」

回想

1989(平成元年)

黒川「ファン第1号として ひと言だけ いいですか? あのね ここで諦めるなんて もったいないですよ。 あなたの歌に励まされて 僕は ここまで 頑張ってこれたんです。」

黒川「横柄な客に罵られても 酔っ払いに絡まれても 後部座席 ガンガン蹴られても あなたの歌を聴いて 彼女も頑張ってるんだからって。 行きましょうよ。 歌いましょうよ。 東京には あなたの歌 必要としてる人が いっぱい いるんですよ。」

春子「ありがとう。」

回想終了

黒川「あれ あれ? 種市君 どうした?」

種市「あっ いや 何か…。(すすり泣き) お父さん かっこいいなって思いました!」

アキ「そう かっけえんだ パパは!」

黒川「あっ そう! ありがとう!」

種市「俺なんか 100万倍の男とか言って 結局 何もしてねえなって…。 卵焼き作ったけど それも冷めてるし!」

黒川「あっ ごめん ごめん。 食べようね。」

アキ「そんな事ねえよ 先輩。 先輩も おらの事 勇気づけてくれたべ。」

回想

種市「ここが ふんばりどころだぞ。」

アキ「え?」

種市「独りぼっちで つれえのは分がる。 でも 今 逃げちゃ駄目だ。 海に底さいる 天野に 空気送り込むのは 自分しか いねえべ。」

回想終了

黒川「いい事 言うじゃないか 君!」

種市「いや 言っただけで 結局 何もしてねえし。 何か 応援するとか言って 家族の留守に 部屋さ上がり込んで。 それこそ 言ってる事と やってる事 全然 違(ちげ)えし…。」

黒川「違ってもいいんだよ 言ってる事も やってる事も。 どっちも ホントなんだよ。 それが 男なんだよ。」

アキ「うまっ!」

水口「アキちゃん…。」

種市「ホントか!?」

アキ「うめえよ 先輩。 これ プロの味だよ!」

黒川「どれどれ…。」

水口「お父さんも…。」

アキ「水口さんも先輩も しゃべってねえで食え。」

黒川「うまっ!」

アキ「んだべ!」

水口「とにかく 当分の間 会うのは おすし屋さんだけにして下さい。 あと メール! そこまでは 目をつぶります。 …という事で。」

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク