連続テレビ小説「あまちゃん」152回「おらたち、熱いよね!」

栗原「そのメロディーが 何とも言えない 不穏で 不快な旋律で。 今にも 魔界の門が開き そこから聞こえる 死霊のうめき声のような…。 死霊の『だんご3兄弟』なんです!」

ユイ「要するに 音痴って事?」

菅原「いやいや いやいや… 歌っこ うまいよ 鈴鹿さんは。」

吉田「んだ んだ。 昔は 歌番組とか出てたもんね。」

菅原「栗原ちゃんは リアルタイムで聴いた事がねえから 分かんねえんだよ。」

<そのころ 当の鈴鹿ひろ美は チャリティーコンサートの準備の大詰め>

天野家

夏「老眼ですか?」

鈴鹿「アハハハッ そうなんです。 もう手放せなくて…。」

夏「春子と 1つ違いでしたっけ?」

鈴鹿「早生まれなんで 学年だと 2つ上です。 ねえ おかあさん! これ どうしたもんかしら。」

夏「何が?」

鈴鹿「『寄せては返す 波のように』。 こちらの皆さんが聴いたら 津波を連想するんじゃないかしら。」

夏「するね。 それが? 何か問題でも?」

鈴鹿「あっ ほら ここも!『三途の川の マーメイド』。 ひどい歌詞。」

夏「そこ変えるんなら ここも変えねばなんねえな。」

鈴鹿「え?」

夏「『17才』でねぐ『47才』にせねばなんねえな。」

鈴鹿「47才…。 ハッハッハッハッ やだ 語呂が悪い。」

(笑い声)

夏「歌っても歌わなくも 津波の事は 頭から離れませんから。 どうぞ お構いねぐ。」

鈴鹿「え?」

夏「それよりも 有名な大女優さんが わざわざ こんな田舎さ来て 目の前で歌ってくれる。 ああ もう それだけで みんな 大喜びでがす。 どうも ありがとうごぜえます。」

夏「春子は 東京さ出てったが あんたのように アイドルには なれねがった。 んでも めんこい孫 連れて 帰ってきた。 いや~ ハハハッ おらの人生 大逆転だ。 ハッハッハッハッ。」

鈴鹿「ねえ おかあさん。」

夏「はい。」

鈴鹿「ちょっと聞いて。」

夏「はい。」

鈴鹿「春子さんが あの…。」

(引き戸が開く音)

アキ「ただいま~!」

夏「ああ お帰り。」

かつ枝「往生際 悪いぞ 大吉! 男なら ビシッと けじめつけろ!」

忠兵衛「お~い 夏さん! 1本つけろてじゃ。」

夏「はい はい はい。 何か言いました?」

鈴鹿「私 やります。」

夏「そんな…。」

忠兵衛「あららららら! 今日は 女優のお酌で飲めるぞ!」

鈴鹿「居候ですから。」

かつ枝「夏ばっぱ 夏ばっぱ! 大吉が ついに覚悟を決めた!」

夏「え?」

長内「明日 ほれ 北鉄の試運転がるべ。 無事に済んだら プロポーズするってよ!」

夏「誰に?」

忠兵衛「誰って おめえ 安部ちゃんしか いねえべ。」

夏「え!?」

鈴鹿「じぇじぇじぇ!」

長内「『じぇじぇじぇ』ってほどの事じゃ ねえぞ。」

かつ枝「んだ んだ。 もともと 夫婦だからな。」

鈴鹿「でも 随分 昔の話よね。」

大吉「22年前。」

鈴鹿「別れたのは?」

大吉「それも 22年前。」

アキ「半年で別れたんだど 鈴鹿さん。 2クールだな!」

(笑い声)

大吉「2クール 2クール。」

(笑い声)

夏「大吉 ホントに 言えんのか?」

大吉「うっ う~ん… 試運転のあと 話があるから リアスさ来てけろって伝えた。」

かつ枝「ほら見ろ! プロポーズしたも同然だべ!」

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