足立家
功「ハハハ! 天野の担任だったからね 随分 彼女とは もめたね あの子はね が~んとして 自分の信念を 曲げないんだよ。」
ユイ「あ! お兄ちゃん。」
功「黙って 通り過ぎるのか? ちゃんと 挨拶ぐらいしなさい。」
アキ「あ どうも お邪魔してます。」
よしえ「御飯食べるでしょ。 座って。」
ヒロシ「要らない 食ってきた。」
ユイ「あそこ お兄ちゃんの定位置。 御飯も あそこで食べるんだよ。」
功「外で済ましてくるんならな 連絡ぐらい 入れたらどうだ。」
ユイ「ちょっと お父さん。」
功「みんな 待ってたんだぞ。」
ユイ「やめてよ 友達 来てるんだから。」
功「ヒロシ 返事ぐらいしなさい。」
ヒロシ「はいはい すいませんでした。」
功「外で食べてきたってな 働きもしないで そんな金が どこにあるんだ。」
よしえ「あなた お願い やめて。」
ユイ「ごめんね。」
功「23にもなってな 昼間から うろうろして 世間体の悪い。 大学まで 出してやったのに 親の顔に 泥を塗るつもりか! 仕事をしないんなら せめて うちから 出ないでもらいたいね。」
アキ「仕事してますよね? 漁協の監視小屋で 密漁船とか 見張ってるんです。 私が 海に溺れた時に サイレン 鳴らしてくれたんですよね?」
<アキは アキなりに 気を利かせたつもりでした>
アキ「その節は どうも ありがとうございました。」
ユイ「そうなんだ。」
ヒロシ「もう 辞めたから。」
<まさか それが火に油を 注ぐ事になるとは>
功「何だ? 監視小屋って。 父さん 聞いてないぞ。」
ヒロシ「もう 辞めたって 言ってんじゃん。」
よしえ「アルバイトよね ほら漁業組合に 問い合わせて 誰とも 顔会わせずに できる仕事だからって…。」
ヒロシ「いいよ どうせ辞めたんだから。」
功「待ちなさい! まだ話が 終わってない。」
ヒロシ「うっせえ 離せよ じじい!」
<『やべえ やっちまった! これ もしや 私のせいですか?』>
ユイ「気にしないで いつもの事だから。」
アキ「え?」
功「何だ? 文句があるなら 言い返してみろ!」
よしえ「あ お代わりする?」
アキ「え? ああ。」
よしえ「それとも メインにする?」
アキ「め… めいん?」
ユイ「いいよ 遠慮しないで どんどん食べて。」
アキ「はい。」
功「言う事 聞いてな おとなしく 地元で 就職しときゃ よかったんだよ。 かっこつけやがって。 父さん 言ったよな 3月に そんなストーブのそばから 離れられないような奴は 東京で続く訳ないって 言ったとおりになったな。 2か月で 帰ってきやがって。」
ヒロシ「2か月半だよ!」
功「うるさい! 威張るな ストーブのくせに! アキちゃんね あいつ ストーブなんですよ。 ストーブだけが お友達。」
アキ「エヘヘヘ!」
よしえ「は~い! 」
よしえ「はい。」
<食べられない。 こんな張り詰めた状況で こんな 脂のしたたる サーロインステーキなんて>
よしえ「ヒロシ ホントに要らないの?」
功「食べて。」
アキ「あ…。」
北鉄
<アキが その日学んだの事 田舎にも おおらかじゃない 人がいる。 ギスギスした家庭もある。 そして おいしい物は どんな状況でも 食べようと思えば 食べられる>
アキ「あ~。」