アキ「『東京 原宿 表参道』。 すげえ。 これ 全部 ママが書いたの?」
春子「そう。」
アキ『愛羅武… 勇』? 勇って誰・」
春子「『愛羅武勇(アイラブユー)』って読むの。」
アキ「へえ~。 これは?」
春子「うん? これはね…。 何?『舞 蹴 蛇』? マイケルジャクソン。 ハハッ どうかしてるよね。 田舎 大っ嫌いだったからね。」
アキ「『海 死ね ウニ死ね』。 ホントだ。」
春子「あんたと正反対だね。」
アキ「うん。 …っていうか ユイちゃんみたい。」
春子「へえ~ あの子 そうなんだ。」
アキ「うん。 卒業したら 東京行くんだって。」
春子「ふ~ん そっか まあ そんな感じだね。 あんたは?」
アキ「えっ?」
春子「東京 戻りたいとか思わないの?」
アキ「うん。 今んとこ平気。」
春子「よかった…。」
アキ「えっ?」
春子「えっ?」
アキ「『よかった』って どういう意味?」
春子「知らないし…。 言ってないし『よかった』なんて 何 言ってんの?」
アキ「待ってよ 春ちゃん!」
春子「はっ!? 春ちゃん!?」
アキ「だって… ママって呼んじゃ いけないんでしょ?」
春子「アハハッ バ~カ。」
アキ「ウフフッ。 春ちゃ~ん!」
春子「やめてよ! 生意気!」
アキ「アハハハッ!」
天野家
春子「あ~ そうだ。 いい事 教えてあげようか。 昔ね おばあちゃんに 潜り教わってる時に言われたの。 長~く 深く潜るために 必要なものって何だと思う?」
アキ「何? 何 何!?」
春子「ヒントは呼吸に関する事。」
アキ「呼吸? あっ 分かった エラ。 エラ呼吸。」
春子「エラのある人間は いません。 人間の体の中で 一番酸素を使うのは 脳みそなんだって。」
アキ「へえ~。」
春子「脳みそを使えば使うほど 考えれば考えるほど 酸素を必要とするんだってよ。」
アキ「…つう事は 脳みそを使わなければ 長く潜れるって事か。 何だ だったら 得意中の得意だっぺ。 脳みそ 使わなきゃいいんだべ。 楽勝だべ! ハハハッ。」
春子「…。」
朝食
夏「春子さん 朝御飯ですけど!」
夏「先に食うべ。 頂きま~す!」
アキ「頂きます。」
夏「何だよ。」
アキ「私 本気獲りさ行ぎでえ。 船さ乗って 沖さ行っでみでえ。」
夏「なして?」
アキ「安部ちゃん 明日で終わりなんでしょ? 思い残す事なく 引退できるように 安部ちゃんが いなくても ウニ取れるってとこ 見せてやりでえんだ。 駄目?」
夏「駄目だ。」
アキ「なして?」
夏「本気だからに決まってっぺ。」
アキ「そっか…。」
夏「それでも行きてえのなら 勝手にしろ。」
アキ「えっ いいの!?」
夏「来んなっつっても来るんだべ。」
アキ「うん。」