学校
潜水土木科実習室
磯野「まあ 潜水土木科といっても そればっかり 勉強する訳では ねえんです。 普通科の生徒のように 国語だの数学だの ありますから。 ただ 女子は いねえです。」
春子「一人も?」
磯野「ゼロです! もう7~8年 男子校状態ですう!男臭いでしょ!?」
春子「いいの? アキ。 平気なの?」
磯野「潜水士の資格も取ろうと思えば 取れますし 何しろ 女子は珍しいですからね! 学校にとっても 明るいニュースだっぺ!」
春子「そういうの ホント 結構なんですよ ニュースとか。 やめて もう ホントに。 だまされないんだから。」
磯野「すいません…。」
種市「失礼します。 磯野先生 実習始めていいですか?」
磯野「ああ すぐ行ぐ。」
種市「おっす。」
磯野「3年の種市君。 こちら 天野…。 黒川?」
春子「天野アキの母です。」
種市「初めまして。」
春子「初めまして。」
種市「じぇじぇ! おめえ ホントに 潜水土木科さ入るのか?」
アキ「はい!」
春子「『はい』って まだ決めた訳じゃ…。」
種市「すげえな。 いい度胸だ。 頑張れよ。」
磯野「じゃあ お母さん 見学していかれます? ちょうど 実習始まりますから!」
春子「よく あんな冷静に作業できるよね。 怖くないのかな?」
<その真剣な横顔を見て アキが 南部もぐりに興味を持った 本当の理由が 分かったような気しました>
春子「…種市君だっけ?」
アキ「えっ?」
春子「うん? さっきの。 感じのいい子。 あの子が 一番器用だね。」
アキ「分かるの?」
春子「だって あの赤い服の子でしょ? 潜水土木も変わったね~。 ママの頃はさ ごっつい熊みたいな 男子ばっかでさ。 あんな シュッとした男の子 いなかったもんね。」
種市「へえ~ そんなんですか。」
アキ「先輩…。」
種市「そろそろ 先生上がってくるんで どうぞ。」
磯野「いかがですか? お母さん! このように 我が潜水土木科はですね 確かな技術指導と 精神的な鍛練を目的とし…。 足つった! イテテテテッ! 助けて! 助けて! 早く おもりさ取って!」