隠し部屋
ユイ「面白いね アキちゃんち。」
アキ「そうだよね。 うん。 ばっぱだけでも強烈なのに…。 まさな じいちゃん生きてるとは…。」
ユイ「うん。 相当 変だよ。」
アキ「でも ばっぱ うれしそうだった。」
ユイ「そりゃ そうだよ。 だって ずっと 一人で暮らしてたんでしょ。 …っていうかさ 何 この部屋!」
アキ「え?」
ユイ「うわっ! 松田聖子のLPじゃん! うわ~!『時をかける少女』のチラシじゃん! えっ 何これ! 誰? えっ 誰?」
アキ「ごめん おら 全然詳しくねえがら。」
ユイ「すごい…。 すごいよ これ! 何で こんなに宝の山なの~!?」
アキ「ママの部屋だから。 ママが高校生の頃 使ってた部屋 そのまま残ってたの。」
ユイ「すごい すごいよ これ。 中野とか 神田とかに行ったら 絶対 高く売れるよ! ちょっと 時々 遊びに来ていい? …ってか 今晩 泊まっていい?」
アキ「じぇじぇ!」
ユイ「明日も車内販売だし…。 ねっ いいでしょ?」
アキ「おら 全然 構わねえが…。」
ユイ「やった~! じゃあ ちょっと 家に電話する。」
居間
春子「父親が死んで 悲しくない娘なんて いる~? いくらさ 年に10日しか うちに いなくてもさ 18の時から 絶縁状態だとしてもさ ショック受けるわ!」
春子「それなりに! それなのに あの人よ。 夏さんよ! いつ どこで なぜ死んだかも 言わない! …っていうかさ! それどころかさ 死んでないじゃないの! ねえ!? 町のみんなで 口裏合わせちゃってさ~!」
美寿々「それは考え過ぎだって 春子さん!」
大吉「んだ んだ! 被害妄想だべ。」
春子「違うね。 みんなで 私の事 だましてたんだね!」
大吉「いやいや だから 黙ってただけだ! だましては いねえ。 何の得がある?」
春子「東京でさ 暮らしてるとさ『母の日には カーネーションを贈りましょう』とかさ『父の日には ネクタイを』とかさ そういうのが こう… 目に入るじゃない? でもね 嘘でも思い出す訳よ。」
春子「嘘でも『元気かな? どうしてるかな?』って 思う訳よ! 分かる これ!? でね 帰ってきたら 仏壇に写真! はい これ! 100人中100人が 死んだとお思います! そうでしょ だって! そうでしょ!?」
長内「よかったべ 生きてて!」
春子「あ?」
長内「それとも 死んでた方が よかったか?」
春子「そんなの 生きてた方が いいに決まってんじゃん。」
かつ枝「生きてる事に 訳なんてねえべ。 生きてるだけで 儲けだべ。」
大吉「納得したか?」
春子「納得した…。」
かつ枝「そしたら いつまでも むくれてねえで 素直に『お帰りなさい』って言え! なあ? 忠兵衛さん!」
春子「お帰りなさい! …っていうか 誰? 違う。」
アキ「夏ばっぱ~! 今晩 ユイちゃん 泊めでもいい?」
春子「うん?」
弥生「あれ 夏ばっぱ どこ行ったんだ?」
花巻「消えだ。」
アキ「消えた?」
花巻「2人して 手つないで出てったべ。」
(笑い声)
春子「何だよ もう~! 何なの もう!」
(笑い声)
かつ枝「やられだ。」
春子「もう嫌だ~。 もう嫌だ~。」
かつ枝「さすがだ。」
春子「やだ~。」
かつ枝「乾杯!」
港
忠兵衛「ただいま。」
夏「お帰り。」
<何か すいません。 1年に10日しか 一緒にいられない夫婦なもんで>