学校
実習プール
種市「もっと 空気抜け。 天野。 浮かんできてるぞ。」
磯野「平行移動! 待機しながら平行移動!」
アキ「『分かってます』。」
磯野「浮かんできてるって!」
アキ「『分がってるって うっせえな』。」
磯野「何? 今 何つった。 おめえ!」
アキ「『一度に いろんた事 言われても 無理です』。」
磯野「この野郎 はあ…。」
忠兵衛「焦るな! ゆっくり 空気抜け!」
種市「誰ですか?」
アキ「『おじいちゃん?』」
忠兵衛「浮かんできたら バルブを少しずつ緩めろ。」
磯野「おじいちゃん?」
種市「おじいちゃん?」
磯野「天野 ちょっと上がって… あっ ピッって鳴っちゃった。 ちょっと…。」
忠兵衛「あんた 何?」
磯野「いや 先生です。」
忠兵衛「先生!? アキが お世話になっていおります。」
磯野「いやいや… こちらこそ。 ごめん ちょっと上がってきて。 ドキドキしてる 先生 今。」
準備室
磯野「へえ~ 昭和34年って事は 卒業生第1号ですね!」
忠兵衛「まあな。 おらの頃は あんな立派なプールなど なかったべ。」
種市「なして 土木関係さ 進まねがったですか?」
忠兵衛「家が代々 遠洋の 漁師だったからな。 それに…。」
アキ「ここが 一番いい所だっていうのを 確認するために 世界を回ってるんです。」
忠兵衛「にいちゃんは 土木関係か?」
種市「はい。 自分は卒業して すぐ東京さ行って 羽田空港の滑走路拡張工事をやります。」
忠兵衛「お~ 立派なもんだ! 頑張れよ。」
種市「はい!」
忠兵衛「歌うか『南部ダイバー』。」
♬『白い鴎か 波しぶき』
磯野「大先輩だよ 大先輩!」
種市「歌え 歌え お前ら!」
♬『若い血潮が躍るのさ カップかぶれば 魚の仲間』
観光協会
ユイ「アキちゃん。」
菅原「やっと来た。 あの この子が例の…。」
池田「海女のアキちゃんだ。 思ったより 普通な感じですね。」
大吉「まあまあ 座って 座って。 ほれ ケーキだ。」
<何か 裏がある。 直感的に アキは そう思いました。 甘そうな 見るからに高そうなケーキ 紅茶。 大人たちの薄ら笑い。 そして 目の前にいる 薄いサングラスの男性。 その薄いサングラスの奥の目>
吉田「こちら 岩手こっちゃこいテレビの…。」
池田「ディレクターの池田と申します。 よろしく。」
<嫌な予感がします>