連続テレビ小説「あまちゃん」32回「おらのじっちゃん、大暴れ」

作業場

忠兵衛「なるほどなあ。 春子も気が強えからな。」

アキ「そんな絶交のタイミングで 大吉さんから メールが来たの。『夏ばっぱが倒れた』って…。」

忠兵衛「何? いつだ!」

アキ「いや 嘘だったんですけど…。」

忠兵衛「何だよ 大吉の野郎 びっくりさせやがってよ。」

アキ「…で ママ すっかり だまされて。 いや だまされては ねえか。 ママも こっちゃ帰る きっかけ欲しくて 大吉さんは ママの事 好きだし おらも 学校で煮詰まってたし…。 そういう ことわざあるよね? 何か こう… ちょうど いがったねっていう。 何とかに何とかみたいな。」

忠兵衛「『猫に小判』か?」

アキ「違う。 もっと こう… Tシャツに ジーパンみでえな。」

忠兵衛「『破鍋に綴蓋』か?」

アキ「違う! もっと こう… なる前に洗顔みでえな。」

忠兵衛「ビールに枝豆か。」

アキ「あっ 渡りに船だ! うん。 そんな訳で 東京か 北三陸か悩んだ末 夏から ずっと 居座ってる状態なんです。」

忠兵衛「ふ~ん そうかい。」

アキ「ごめんね 説明が下手で。」

忠兵衛「う~ん まあ… 半分も分かんねがったが ここが好きなのは よ~ぐ分かった。」

アキ「好きだ! 東京より 全然好きだ! 海も人も 電車も ウニも まめぶも 全部大好きだ!」

忠兵衛「おらも好きだ。」

アキ「だったら 何で船さ乗るの? 何で 年に10日しか帰ってこねえの?」

忠兵衛「う~ん なしてだべなあ。」

アキ「生ぎでいぐため?」

忠兵衛「それもある。 海が好きなのもある。 だが あえて言うなら… ここが いい所だっていうのを 確認するためだな。」

忠兵衛「ほら 夏さんは 北三陸から 一歩も出た事ねえべ だから おらが代わりに 世界中を旅して回ってよ いろんな国の いろんな町を この目で見て回ってよ んでも やっぱ ここが 一番いいぞって教えてやってんだ。」

アキ「東京よりも?」

忠兵衛「北三陸も東京も おらに言わせれば 日本だ。」

アキ「かっけえ~!」

忠兵衛「…あ?」

アキ「ウフフッ。」

<人とは違う時間が おじいちゃんの中には 流れている。 世界を旅する男は スケールが違うんだ。 アキは すっかり おじいちゃんに 夢中になりました>

北三陸駅

大吉「アキちゃん ユイちゃん! 今日 放課後 空いてる?」

ユイ「はい。 私は大丈夫ですけど…。」

アキ「おらは潜水の実習があるから。」

大吉「じゃあ 4時ごろ 観光協会さ来てけろ。 ケーキ用意して待ってっから。」

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