漁協
回想
1984年(昭和59年)
功『まあ 不良でね 問題児だったけど 歌は好きだったね。 寄り合いや 盆踊りに呼ばれて 歌って 小遣い稼いでた。』
一同「アンコール! アンコール!」
春子「もう いいよ~。」
忠兵衛「次は テレサ・テン歌え!」
(歓声)
春子「4曲 歌ったべ!」
忠兵衛「いいから 歌え この! おら 明日から また1年 海さ出るんだぞ!」
回想終了
長内「じぇじぇ! こったらの あった! アキちゃん 海女クラブで金出し合って カラオケの機会 買ったんだじゃ まだ カセットの時代だ。」
かつ枝「これだ これ! あった あった ほら! トロフィーだぞ!」
アキ「じぇじぇ!」
かつ枝「見ろ ほら 写真。」
アキ「すげえ!」
かつ枝「ヘヘヘッ 若(わけ)えべ。」
アキ「何で隠してたの?」
かつ枝「別に隠してた訳じゃねえけどな。」
長内「漁さ出る前の晩は ここで酒盛りして 春ちゃん呼ばれて 歌ってた。 ハッハッハッハッ!」
弥生「忠兵衛さん どこさ行ぐにも 春ちゃん連れて 歩いでだものなあ。」
アキ「仲良かったんだ。」
美寿々「めんこくて 歌うまくて 人気もんだったもん。」
かつ枝「でも 時々 夏ばっぱとは ぶつかってたなあ。」
回想
夏「春子~! 春子 どこさ行った!? 春子~!」
灯台
<『東京 原宿 ウニ死ね』。 春子が アイドルに憧れて 東京へ出たのは 間違いなさそうです>
<なぜ 今まで 秘密にしていたのか なぜ 町の人たちまで なかった事にしようと しているのか。 やっぱり 春子に 直接聞かなきゃ分からない>
アキ「ウニが1匹 ウニが2匹 ウニが…。」
アキ「やんだ もう! 何で起こしてくんなかったの!?」
黒川「おはよう。 御飯は?」
アキ「食ってたら 電車行っちまうべ!」
夏「ほれほれ! 乗ってから食え!」
アキ「あっ ありがとう。」
春子「行ってらっしゃい。」
アキ「うん。 行ってきます!」
夏「はい 行ってらっしゃい。」
夏「正宗さん 夜寝てて 寒ぐねえか? 風も入るべ。」
黒川「平気です。 いろりの余熱で 結構暖かいんで。」
春子「味付いてる。」
黒川「あっ ごめん。」
忠兵衛「ここらは 年越してからが 本格的な冬だすけな。」
黒川「あ~ そうなんですか!」
夏「2月 3月が 一番 雪降るんだ。」
黒川「あ~ じゃあ フリース買っておいた方がいいな。」
忠兵衛「フリ…? フリー 何?」
黒川「ご存じないですか? フリース。 暖かい上に軽いから お父さんなんか 必需品ですよ。」
忠兵衛「へえ~!」
黒川「あっ 御飯食べたら 一緒に買いに行きましょう。」
春子「それ 殻入れじゃない取り皿。」
黒川「あっ ごめん。」
忠兵衛「後で 保険証出しておいてけろじゃ。」
春子「病院行くの?」
夏「定期健診だ。 毎年恒例の。」
忠兵衛「まあ どこも悪くねえんだけどな。」
春子「…何? 御飯?」
黒川「ごめん。」
忠兵衛「正宗君は健康そうだな。」
黒川「いやいや いやいや! 血圧も高いし 悪玉コレステロールが…。」
春子「はい。」
黒川「ありがとう。」
春子「…っていうか いつまで いるんですか?」
黒川「えっ 僕?」
春子『僕だよ! ほかに誰がいる!」
忠兵衛「俺は日曜日に船さ乗る。」
夏「あら あらら あと5日もある。」
忠兵衛「おう。」
春子「正宗君は? アキの誕生会 終わりましたけど?」
黒川「あ~ 楽しかったな アハハハッ!」
春子「思い出し笑いしないでよ 気持ち悪い。 何が フリースだよ。 寒さ対策してんじゃねえよ。」