回想
<1984年(昭和59年)夏 おらのママこと 天野春子さんは 上野に降り立ちました>
<素人参加型のオーディション番組『君でもスターだよ!』に 出場するためです>
(拍手)
司会者「はい! 7組のチャレンジャーは東北ブロックから 岩手県北三陸の高校生 天野春子君です!」
アシスタント「歌は松田聖子さんの『風立ちぬ』。」
♬『風立ちぬ 今は秋 今日から私は 心の旅人』
<いける。 ママは手応えを感じたそうです。 歌いだしのリズムも高音の伸びも 申し分ない>
♬『すみれ ひまわり フリージア』
チャンピオン♬『Wind is blowing from the Aegean 女は海 好きな男の腕の中でも』
<チャンピオンの歌を聴いた時 ママは勝利を確信しました。 唯一 不安な事があるとすれば 審査員長のヘッドホンのコードは 拭けてる>
チャンピオン♬『Wind is blowing from the Aegean 女は恋』
司会者「お待ちかねの結果発表! スイッチ オン!」
♬~(ドラムロール)
司会者「62対38で チャレンジャー 天野春子君の勝利!」
(拍手)
春子「やった!」
アシスタント「チャピオン無念! 9週で敗退です!」
<結果は圧勝。 ママは見事 第135代目チャンピオンの栄冠に 輝きました>
司会者「さあ 新チャンピオンの天野春子君 来週も勝ち抜けるのか!? …と言いたいところですが ここで悲しいお知らせがあります。」
春子「え?」
司会者「実は『君でもスターだよ!』は 本日の放送をもって 終了となります。 7年間ありがとうございました!」
春子「ええっ!?」
アシスタント「来週から この時間は『ものまね 君でもスターだよ!』と題しまして 装いも新たに スタート致します。」
<突如 告げられた 番組の打ち切り。 ママは天国から一転 奈落の底へと突き落とされました>
春子「私って どうなるんですか?」
プロデューサー「まあ 幻のチャンピオンってとこだよね。」
春子「え~ あの 困るんです! 困ります ホントに! あの…。」
プロデューサー「ものまね できる? 伊代ちゃんとか。」
春子「ものまね ちょっと できないんです。」
プロデューサー「だよね。 フフフッ。」
荒巻「ちょっと待って下さいよ。」
プロデューサー「しつこいな…。 ねえ ものまね できないの?」
荒巻「こう見えて 僕 トシちゃんのバックで 踊ってるんです。」
プロデューサー「知らねえよ ものまね番組だよ? ものまね できなかったら クビ。」
荒巻「ああ…。 ものまね ものまね…。 あっ ごめんなさい。 すいません。」
春子「ありがとうございます。」
荒巻「ものまね…。 ものまねなんか できないよ。」
春子✉『その人が ママの運命を 変える事になるとは その時は 思いもしませんでした』。