無頼鮨
(引き戸が開く音)
鈴鹿「こっち こっち! 紹介します。 こちらが 今 話してた えっと…。」
アキ「天野アキです。」
鈴鹿「ここにいるのが BS時代劇『静(しずか)御前』のスタッフです。 という訳で 明日は 8時回しだから 6時半 西口玄関 よろしくね。」
アキ「えっ? えっ? えっ 水口さん…。」
水口「すいません 彼女 まだ何も…。」
鈴鹿「あ~ら そうなの? 付き人を探してたの。」
アキ「えっ おらが?」
鈴鹿「『おら 付き人になるだ~』の巻きよ。 フフッ お願いね。」
アキ「あららら どうすべえ。 ちょっと考えさせてもらって いいですか?」
鈴鹿「じょじょ。」
水口「すいません まだ 子どもなんで。」
アキ「あの… 何で 私なんですか? ひょっとして 同情してんのですか?」
鈴鹿「じょじょ。 何で 私が あんたに 同情しなきゃなんないの?」
アキ「ごめんなさい。 2回も ごちそうになったから…。」
鈴鹿「あんた 私より かわいそうだっていうの? 冗談じゃない。 私だって 随分 かわいそうよ。 負けないよ。」
アキ「でも だって 有名な女優さんじゃないですか。」
鈴鹿「それが何? 有名な女優さんだから 幸せだっておっしゃるの? アハハッ ちゃんちゃら おかしい。 あんたに 私の何が分かんのよ。」
水口「すいません まだ 子どもなんで…。」
アキ「今日は 何か いろいろあったんです。 親友が… 田舎から出てくるはずだった 親友が来れなくなったりとか…。」
鈴鹿「お父さん倒れちゃったんでしょ?」
アキ「え?」
鈴鹿「しかも お母さんが失踪して…。」
アキ「やだ 何で知ってるんですか?」
鈴鹿「彼から聞いたのよ。」
アキ「じぇじぇ!」
鈴鹿「『じぇじぇ!』か。 あっ だよね!『じょじょ』は奇妙な冒険よね。 アハハハハッ!」
水口「あれ? 君 確か 潜水土木の…。」
種市「どうも。」
アキ「『どうも』じゃねえべ 先輩! 田舎さ帰るんじゃなかったのか?」
種市「やめた。 ここで働く事にした。」
アキ「何でだよ。 ユイちゃん 今 大変なんだぞ! 帰ってやったらいいべ。」
種市「うるせえな 俺には俺の考えがあんだよ。」
梅頭「この間の説教が 効いたみたいだよ。」
アキ「せ… 説教?」
回想
アキ「エリートで プライド 高(たけ)えのは 先輩の方じゃねえか! 何だよ おらの初恋の相手は こんな ちっちぇえ男だったのかよ!」
回想終了
梅頭「あれから 2~3日後かな 訪ねてきたの。 ここで働きたいって。 まあ うちも ちょうど 若いのが 辞めたとこ…。」
(引き戸が開く音)
梅頭「いらっしゃい!」
種市「いらしゃいませ!」
アキ「じぇじぇじぇじぇじぇ 参ったな。」
鈴鹿「…で どうすんの? 付き人やんの? やんないの?」
アキ「ああ え~っと…。」