連続テレビ小説「あまちゃん」96回「おらのママに歴史あり 2」

春子「ありがとうございます。 ホットコーヒーとミックスサンドで 650円です。」

手紙・春子『一回歌うと 3万円もらえました。 もちろん その中には 口止め料も含まれています』。

春子「あの…。」

荒巻「大丈夫。 君の経歴に 傷がつくような事は 絶対にないから。」

回想終了

鈴鹿「歌番組?」

アキ「はい 出たんですよね? アイドル時代は。」

鈴鹿「何か うっすら記憶あるわね。 でも2~3回よ。『潮騒』の時 一番忙しかった頃。」

アキ「歌ったんですか?」

鈴鹿「そりゃそうよ 歌番組だもの。」

アキ「中には 口パクの人もいるべ。」

鈴鹿「私駄目なの バレちゃうの 合わせられないの。」

アキ「ふ~ん。」

手紙・春子『昭和61年 夏に発売された セカンドシングル『縦笛の天使』は 3週連続1位。 サードシングル『DON感ガール』は 惜しくも1位を逃しましたが B面のバラード『私を湖畔に連れてって』が 翌年の春の 甲子園の 入場行進曲に選ばれました』。

回想

春子「どうぞ!」

荒巻「ファーストアルバムの 話がきている。」

春子「私の?」

荒巻「バカな! 鈴鹿ひろ美だよ。 フフフ! ごめん。 本人は それほど 乗り気じゃない。 もともと歌は そんなにやりたがる 女の子じゃなかったから。 ただ 社長が出すんなら 早く出そうと言ってる。 セールスの方も 落ちてきてるしね。 本人もそれは 分かって…。」

春子「嫌です。」

荒巻「え?」

春子「やりたくありません。」

荒巻「本当に これが最後だから。」

手紙・春子『このまま 1曲3万円で 影武者をやってたら 永遠に デビューできない。 田舎者で 世間知らずな私でも 分かりました』。

荒巻「春子ちゃん いずれ君がデビューする。 必ず デビューできるように 僕が後押しするから。」

春子「もう 二十歳になっちゃったんですよ。」

荒巻「それは… それは おめでとう。」

春子「私 アイドルって もうきついですか? だったら そう言って下さい!」

荒巻「全然 だって二十歳に見えないもん せいぜい19だよ。」

春子「デモテープ 社長に聴かせるって 約束してくれましたよね?」

荒巻「え? ああ 聴かせたよ。」

春子「え? ホントですか?」

荒巻「うん。」

春子「反応は?」

荒巻「『似てる』って。」

春子「似てる? 誰に?」

荒巻「鈴鹿ひろ美。『鈴鹿ひろ美の声に似てる』って 社長。」

春子「はあ?」

荒巻「うん 分かる 分かる。 うん 分かる 分かるよ。」

春子「何言ってんの! バカなの? お宅の社長! バカ社長なの!」

荒巻「落ち着こうか! 春子ちゃん 一旦落ち着こうか!」

春子「似てるよ だって私じゃん! どっちも 私じゃん! 似てて 当然じゃん!」

荒巻「落ち着け うるさいよ! もう おっぱい触るぞ! あ 嘘です。 ごめんね。」

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