居間
裕一「ほら 大将 上がって。」
久志「どうぞ。」
「いや~ うれしい! 見で!」
「私も頂けっかしら?」
久志「もちろんです。」
鉄男「久志?」
裕一「何で? ちょっと…。」
まさ「裕一。」
裕一「あっ!」
まさ「お帰り。」
裕一「母さん。 ちょ… ねえ 何で? 何で 何で 何で?」
まさ「歌手の方まで来てくれて 皆さん 大喜びよ。」
裕一「う… うん…。」
「『露営の歌』大好きなの! レコードも買ったのよ。」
久志「本当ですか。 うれしいな。」
「実物も いいお声だわ~!」
久志「(せきばらい)ありがとうございます。(必殺ウインクw)」
「あっ…。」
「あ~ 裕ちゃん 久しぶり!」
裕一「あ~ どうも ご無沙汰してます。」
「歌手の佐藤さん いたもんで びっくりだわい。」
裕一「あ~ それはそれは…。 ちょちょ… ねえ 何してんの? 何で?」
久志「僕だって三羽ガラスの一員だからね。 仲間外れにしようったって そうはいかない。」
気を取り直して
久志「これ つまらないものですが。」
まさ「どら焼き? すみません わざわざ。」
久志「ここのどら焼き あんこが とってもおいしいんです。」
まさ「お父さんにお供えしなきゃ。」
裕一「そうだね フフッ。」
まさ「うちのお父さんね お酒も大好きだったけど あんこも大好物だったの。 早速 開けさせて頂くわね。 ちょっと待ってて。」
裕一「うん。」
浩二「ただいま~。」
裕一「浩二だ! 浩二 ただいま!」
浩二「兄ちゃん お帰り!」
裕一「弟の浩二。」
浩二「どうも。」
鉄男「どうも。」
久志「お邪魔してます。」
裕一「今ね 市役所でりんご栽培の支援してんの。 どう? 最近。」
浩二「あ~ なんとか 一歩ずつ進んでる。」
裕一「そっか。」
浩二「うん、。 あっ それにしても 兄さんの方も いがったな。」
裕一「うん?」
浩二「『露営の歌』。」
裕一「ああ… ありがとう。」
浩二「近所から 兄さん 町の誇りだって言われて。」
裕一「えっ!」
浩二「母さんも喜んでる。」
裕一「ハハハ…。」
浩二「そうだ そうだ… これ よかったら皆さんで。」
鉄男「あ~ わざわざ どうも。」
久志「よくできた弟さんだ。」
裕一「ありがとう。」
浩二「じゃあ 僕は これで。」
裕一「えっ!? もう行くの?」
浩二「あ~ 今から生産組合の集まりなんだ。」
裕一「そっか。」
浩二「じゃあ ごゆっくり。」
久志「また。」
裕一「気ぃ付けて。」
裕一の部屋
鉄男「『露営の歌』人気すげえな。 2人とも福島の星だな。」
裕一「母さんも浩二も大げさだったよ。」
鉄男「お母さんも弟さんも いい人だ。 いい家族だな。」
裕一「まあ 顔 見っと ほっとするよね。」
鉄男「久志は? 実家は戻んなくていいのか?」
久志「実は ちょくちょく こっち戻ってきてんだ。」
裕一「へえ…。」
久志「父さんも年取って あちこち ガタが来てて心配でね。」
鉄男「そうか… 家族がいっと 心配事が増えるもんなんだな。」
まさ「裕一 いらしたわよ。」
裕一「大将 立って。 久志。」
久志「何?」
裕一「いいから いいから… 下 行こう。 行こう 行こう。 お客さん お客さん。」
久志「えっ?」
居間
鉄男「えっ?」
久志「藤堂先生!」
藤堂「よう みんな。 元気そうだな。」
昌子「裕一君 お久しぶり!」
裕一「昌子さん お久しぶりです。 どうしてもね 藤堂先生に会いたくて 遊びに来て下さいって誘ったの!」
まさ「今夜は宴会ね!」
裕一「うん!」