打ち合わせ中の裕一と三隅
三隅「こちらになります。」
裕一「はい。『若鷲の歌』。『若い血潮の予科練の 七つボタンは桜に錨 今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ でかい希望の雲が湧く はあ ヨカレン ヨカレン すばらしい詞です。」
三隅「でしょ!? 西條さんも とても苦労されてたのですが 実際に予科練を見学して頂きまして そうしましたら そこで いきなり 最初の2行が浮かばれまして もう それからは一気でした! いいですよね~! 特に 僕は その『七つボタンは桜に錨』ってところが 何とも詩的で…。」
裕一「ただ…。」
三隅「はい?」
裕一「あの… この『ハア ヨカレン ヨカレン』が ちぐはぐかなと…。」
三隅「そうですかえね~? ここは聴かせどころですし…。」
裕一「いや そうなんですけど… この部分 なくしてもいいか 西條先生に聞いてもらえませんか?」
三隅「いや~…。 最後の一番盛り上がるところですよ? ♬『ハア ヨカレン』あっ 違うっか? まあまあ それは先生に任せるとして え~ みんなが歌う場面 浮かびますけどね~。」
裕一「いや… 最後は この『でかい希望の雲が湧く』締めた方が 力強くなります。」
三隅「では3日後 上野待ち合わせでお願いします。」
裕一「よろしくお願いします。」
三隅「これだから音楽家は…。 んっ!」
古山家
裕一「彼らのような若者のおかげで… 今 この国はもってるんだ。 頑張らないと…。」
礼拝
礼拝も厳しく監視されるようになった 信徒たちはひそかに集まって対応を話し合いました。
柿澤「殺されたんだわ。」
瓜田「ほだほだ! 許せんって!」
光子「声 抑えて。」
梨本「光子さん あんた ず~っと黙っとるが どう思っとるだ?」
光子「私は… 私の信仰は捨てたくない。 守りたい。」
瓜田「ほだらあ…。」
光子「だからといって 危険を冒すくらいなら 今は…。」
梨本「あんた 戦争に協力するっちゅうことかん?」
光子「どうしようもないことはある。」
柿澤「都合がよすぎるわ。 まあ それも しょうがないわ あんたら 軍のお金で ごはん食べとるで。 そのおかげで 兵役逃れの人もおるし。」
梅「ひどい…。 取り消して下さい!」
柿澤「違っとる? 違っとるなら謝るわ。」
司祭「ともかく こういう集まりは危険だで。 しばらくは やめとこまい。」