関内家
梅「『聖書』読んどるの?」
五郎「何か寝れなくて。 みんなが危険を冒してまで 信仰してるものを 僕も もっと知りたくなって。」
梅「そっか… 本当 不自由な時代よね。 本も自由に書けんし…。」
五郎「でも 書いてんでしょ?」
梅「まあね。」
五郎「すごいな~ 梅ちゃんは。 本のアイデアは どこから来んの?」
梅「昔ね 裕一さんが突然 うちに来たの。」
五郎「先生が?」
梅「フフ… お姉ちゃんを奪うためにね。」
五郎「あの先生が そんな大胆な行動を?」
梅「そう 意外でしょう。 …で その時 言われたことがあって。」
回想
裕一「音さんいないと 曲 書けないんだ。 ものを作るには 何かもきっかけとか つながりが必要なんだ。 ほら 梅ちゃん 今 自分の中から出そうとしてっけど 書けないなら ほら… 外に 目 向けてみっといいかも。」
梅「その言葉が突破口だったんだ。」
五郎「僕だけじゃなく 梅ちゃんまで。 先生は偉大だ。」
梅「うん。」
裕一「(くしゃみ)」
梅「つまりね 五郎ちゃん あなたがいるから 書くことができるの。」
五郎「梅ちゃん…。」
梅「梅って呼びん。」
五郎「えっ? う う…。 梅。」
(五郎のすすり泣き)
梅「フフフ…。」
古山家
裕一「よし… じゃあ 行ってきます。」
華「気を付けて。」
裕一「いい子でね。」
華「うん。 行ってらっしゃい。」
裕一「行ってきます。」
華「お父さん どこ行くの?」
音「予科練。」
華「よかれん?」
音「兵隊さんになる訓練をするところ。 そこで作った歌を披露するんだって。」
華「ふ~ん。」
海軍飛行予科練習生 いわゆる予科練の制度は 海軍の航空機 搭乗員育成のため 10代の志願者に 厳しい基礎訓練を施すものでした。 その採用試験は大変に狭き門であり 練習生の七つボタンの制服は 少年たちの憧れの的でした。