縁側
五郎「梅… 少し出てくる。」
梅「うん。 どうしたんだろう? 裕一さんの大声 初めて聞いた。 何があったの?」
音「裕一さんは 自分が招集されんことを 申し訳ないと思っとる。 みんな戦っとるのに 自分は何もしとらんって。 後ろめたい気持ちが どんどん どんどん 戦意高揚の歌に傾かせとる。 怖いの…。 ごめん。」
梅「そっか…。 あのね… 五郎ちゃん キリスト教に入信したの。」
音「そうなの?」
梅「あの人 まっすぐすぎる。 ちょっと不安。」
音「そうか…。」
梅「昔は すぐ言い合いになっとったのに 今は 落ち着く。 不思議だね。」
音「そうね。」
梅「ありがとう。」
音「梅… 結婚おめでとう。」
梅「ありがとう。 ちょっと…。」「
音「フフフ…。」
玄関
五郎「お世話になりました。」
梅「じゃあ 行くね。」
音「気を付けてね。」
五郎「失礼します。」
華「梅ちゃん 五郎ちゃん またね。」
音「まだ仲直りしてないんですか?」
裕一「『聖書』渡された。」
音「そう…。」
裕一「難しいね… いろいろ。」
久方ぶりに 弘哉がやって来ました。
音「すっかり大人っぽくなったよね。」
裕一「うん!」
弘哉「今日は 裕一さんと音先生に 報告があって 来たんです。」
裕一「報告?」
弘哉「僕 予科練に合格したんです。」
華「予科練って この前 おとうさんが 行ったところ?」
裕一「そう!」
華「えっ 試験 難しいんでしょう? すごいね!」
弘哉「入隊する前に 最後に 裕一さんと音先生に お礼のご挨拶をしに参りました。」
裕一「そっか。」
弘哉「『決戦の大空へ』を見て 心を動かされました。 私も仲間と共に この国のために戦いたいと思ったんです。 それに『若鷲の歌』を作った方が こんなに身近にいる。 これが私の目指す道だと気付いたんです。 裕一さんから頂いたハーモニカを 持っていきます。 音楽教室 本当に楽しかったです。 ありがとうございました。」