居間
梅「糸くず ついてる。」
五郎「ありがとう。」
華「お父さん 梅ちゃんと五郎ちゃんが来た。 結婚したって!」
裕一「五郎君! ハハハ…。」
五郎「先生~!」
裕一「おっとっとっと…。」
音「あ~!」
裕一「いや~ 長かったね~! よかったね~!」
五郎「はい! 岩城さんのおかげです。 駄目な僕に根気強く教えて頂いて。」
裕一「もう 梅ちゃんに振られるんじゃないか って心配してたんだよ~。」
梅「私には 五郎ちゃんしかいないので。」
音「あら お熱い…。 梅が素直に そんなこと言う日が来るなんて…。 お姉ちゃん もう…。(ウソ泣き)」
五郎「お義姉さん これ。」
音「うそ~。」
五郎「ああ… え~?」
梅「お姉ちゃんが そんなことで泣くわけないわ。」
(笑い声)
裕一の仕事場
五郎「結婚できたのは 先生の助言のおかげです。」
裕一「違うよ。 五郎君が頑張ったからだよ。 あっ! あった。 五郎君 これ 覚えてる?」
五郎「僕が書いた曲。」
裕一「そう。 結婚したら渡そうと思って編曲しといた。」
五郎「一生の宝物です! ありがとうございます!」
裕一「いいえ。 五郎君 本当におめでとうございます。」
五郎「作曲家には なれなかったですけど 今 僕は幸せです。」
裕一「フフッ… よかった。」
五郎「ただ…。」
裕一「うん?」
五郎「僕は馬具職人になります。 馬具のほとんどは 軍に納められます。」
裕一「五郎君… 馬具は 人を殺すための道具じゃない。 人や馬の命を守るためにある。」
五郎「はい… 岩城さんにも そう言われますけど…。」
裕一「うん。」
五郎「時々… 胸が苦しくなります。 先生は なりませんか? 差し出がましいようですが 先生には 戦争に協力するような歌を 作ってほしくありません。 先生には 人を幸せにする音楽を 作ってほしいんです!」
裕一「僕の曲は 人を幸せにしてないかな?」
五郎「先生の歌を聴いて 軍に志願した若者が たくさんいます。」
裕一「五郎君… 国のために戦いたいと思う気持ちは 決して悪いことじゃないと思う。」
五郎「闘わなければいいのです! 戦いがなければいいのです!」
裕一「現実 日本は今 戦ってるんだ。 多くの人が 勝つために命を落とした。 その命に報いるためにも 戦い続けるしかない。」
五郎「戦争に行く人が増えれば 無駄に死ぬ人が増えるだけです!」
裕一「命を無駄と言うな!」