古山家
裕一の仕事場
華「どうぞ。」
池田「これは これは。 かわいい娘さんですね。 ねえ? おうちが華やかになる。 お名前は?」
華「華です。」
池田「はな!? あらやだ。 アハハハ…。 えっ 植物の方の『花』?(鼻をつまみながら) まさか これじゃないようね? アハハハハ…。」
裕一「華。」
裕一「ご用件は?」
池田「あ~ すいません。 ついつい 天才作曲家にお会いできて うれしくて。」
裕一「ご用件を。」
池田「ラジオドラマやりませんか? 私が書いたドラマに 先生の音楽を添えてもらいたい。」
裕一「申し訳ありませんが ほかを当たって下さい。」
池田「先生が もう書かないとか 書けないとかいう うわさは聞いてます。 しかし ただのうわさなので 私は来ました。 私は 先生の『愛国の花』が大好きです。 初めて聴いた時 心が震えました。 いつか この人と仕事がしたいって ずっと思ってました。 この先にある物語のためにも 先生が必要なんです。 お願いします どうか!」
台所
華「フフッ いい話。 やるの?」
裕一「…」
華「えっ… やるよね?」
裕一「うん…。 音楽は もういいかな。」
華「今のお父さん見たら 弘哉君 どう思うのかな? お父さんの曲 聴きたいって きっと思ってるよ。」
裕一「うん… うん。」
裕一の仕事場
裕一「はあ…。」
病院
病室
音「岩城さん 音です。 聞こえますか?」
廊下
医師「心臓の鼓動も弱く 不整脈が頻回に出ています。 心臓は あと数日 もつかどうか…。 心の準備をしておいて下さい。」
待合所
光子「あっ… お帰り。」
音「全部… なくなってしまったんだね。」
光子「命が助かっただけでも よかったわ。 それに… 私たちの思い出は ここにある。」
音「うん。」
光子「うん。 裕一さんと華は元気?」
音「うん… 2人とも 大切な人を亡くしてしまって…。 華は それでも立ち直ろうとしとるけど 裕一さんは…。 ずっと曲が書けんの。」
光子「そう…。 よほど つらい経験をしたのね…。」
音「うん…。」
光子「帰った方がいい。 そばにいてあげたら?」
音「岩城さん ほっとけん。 私には何もできんし。」
光子「華だって心細いわよ。 うん? そばにいるだけでいいの。 ねっ? フフッ。」
音「ありがとう。」
梅「お母さん お姉ちゃん これ見て。 2人で革製品 出し合ってみたの。」
回想
梅「う~ん 商売敵が多そうだね~。」
五郎「もっと何かあるはず… この辺まで出てきてんだけど…。 出てこえねえな~。 先生に弟子入りしたきっかけは『紺碧の空』…。 あっ! ああっ!」
梅「うん?」
五郎「野球だ! 野球のグローブだ!」