玄関前
茂「せっかく出てきたのに 本当に もう帰るのか?」
修平「光男も 明日は 出社せんと クビになるかもしれんけん ハハハ!」
光男「嫌な事 言わんでくれよ!」
絹代「あんた 仕事中でしょう? もう ええけん はよ 仕事に 戻りなさい。」
茂「ああ。」
絹代「助手の人達を 待たせたらいけん。」
茂「うん。 ほんなら 元気でな。」
絹代「うん。」
布美枝「私 駅まで送っていきます。」
絹代「ええけん 光男もおるけん…。 それより 布美枝さん。」
布美枝「はい。」
絹代「くれぐれも 体を大事にね。 年明けに 元気な赤ん坊の便りが 聞けるのを 私ら 楽しみに待っとるけん。」
布美枝「お母さん。」
絹代「茂も あんたも 今が大事な時だわ。 頑張~なさいよ。」
布美枝「はい。 次はもっと ゆっくり いらして下さい。」
絹代「だんだん! やっぱり 寒い時は 東京の方が ええわ。 境港は 西風が びゅ~ びゅ~ 吹くけん。」
修平「そげだな。」
絹代「うん。 さてと 行きましょか。」
修平「布美枝さん また。 邪魔したな。」
布美枝「お父さん これ…。」
修平「ん?」
布美枝「新しいテレビを買う足しにって 茂さんが。」
修平「あれは 嘘だ。」
布美枝「えっ?」
修平「テレビは 壊れとらんが。 母さんが 急に 東京で茂と一緒に 放送が見たいと 言いだすもんだけん。 ハハハ! でも まあ これは ありがたく ちょうだいしとくか。 ハハハ!」
台所
いずみ「お疲れさま。 台風が 通り過ぎたみたいだね。」
布美枝「うん。 けど 茂さんの事 本当に 応援してくれとるんだわ。」
いずみ「同居じゃなくて よかったね。 一緒に暮らしたら 大変だよ。」
布美枝「そげだね。 あれ?」
回想
絹代「やっぱり 寒い時は 東京の方が ええわ。 境港は 西風が びゅ~ びゅ~ 吹くけん。」
修平「そげだな。」
回想終了
布美枝「何か今 ぞくっとした。」
いずみ「大丈夫? 妊婦さんが 風邪ひいたら いけんよ。」
布美枝「あ… うん。」
<『悪魔くん』のテレビ放送は 子供達の心をつかみ 人気番組になりました。 それも 牽引役の一つとなって 『週刊少年ランド』は 刷り部数 100万部を達成したのです>
仕事部屋
(小鳥の鳴き声)
昭和四十一年十二月二十四日
ラジオ『ジングルベル』
茂「ここに 点々を打ってくれ。」
菅井「はい。 こういったところ 線とか足しとかなくて…。」
茂「線は ええけん 点だけ 打ってれば ええんだ。」
菅井「はい。」
ラジオ『ジングルベル』