連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第117話「妖怪いそがし」

純喫茶・再会

マスター「やあ いらっしゃい。」

修平「よう。」

亀田「おっ こりゃまた おじいちゃん。」

修平「今日も おったんですか。 あんた 暇で結構ですな。」

亀田「ほんとの事は 言わないで~。 そんな事より おじいちゃん 見てきましたよ。 おじいちゃんのお薦め 歌舞伎座。 『切られ与三郎』 いや~ 面白かったねえ。」

修平「『いやさ お富 久しぶりだなあ』。」

亀田「『そういうお前は』。」

修平「『与三郎だ。 ぬしゃあ 俺を見忘れたか』。」

マスター「よっ ご隠居屋!」

亀田「『こら! あんた~』って うちのが呼んでいる~。 ごゆっくり…。」

修平「布美枝さん あんた 何にする?」

布美枝「あ コーヒーで…。」

周平「ご主人コーヒーと いつもの。」

マスター「はい。」

布美枝「ここでも おなじみさんなんですね。」

修平「あんたも たまには 息抜きした方がええぞ。」

布美枝「え?」

修平「ここ。 しわが寄っとる。」

布美枝「あ…。」

修平「うちの奴は ガミガミ うるさいかもしれんけど 聞くだけ 聞いといてごせば ええが。」

布美枝「いえ お母さんの事では ないですけん。 子供達の事 どげしたもんかなあって 考えとって…。」

修平「喜子の事か?」

布美枝「幼稚園の先生 てこずらせてばっかりです。 もう何回 呼び出された事か。」

修平「ふ~む。」

布美枝「藍子まで 近頃 機嫌が悪いみたいで 反抗期でしょうかねえ…。」

マスター「お待たせしました。 コーヒーと ホットコーラです。」

布美枝「ホットコーラ?!」

修平「冷たいと 腹が冷えていけん。 温めて レモン汁を ちょんぼし加える。 これが うまい!」

マスター「これね お父さんの特注。」

布美枝「は~あ…。」

マスター「ごゆっくり。」

修平「喜子は 茂の子供の頃に 似とるなあ。 自分の興味 優先で 世間の決まり事は 後回し。 しかも 役に立たん事ばっかりに 夢中になるけん 少し足らんように見えたわ。 幾つの時だったか… 裏のお稲荷さんで じ~っと立ってるので 何しとるんだと聞いたら 『狐が動きだすかどうか 見張っとる』と言うんだ。」

布美枝「お稲荷さんの 石の狐をですか?」

修平「学校でも おかしな事ばっかり やっとった。 講堂で 厳粛なる儀式を 行う時があるだろう?」

布美枝「はい。」

修平「し~んとした中で 校長先生が ありがた~い訓示をたれて 子供やちが 退屈しきったところを 見計らって… 一発 かます。」

布美枝「何をですか?」

修平「屁だ。」

布美枝「え?」

修平「ぷ~というような 屁ではない。 ナップ~ンと鳴らすそうだ。」

布美枝「ナップ~ン…?」

修平「子供やちは 校長のつまらん話の間 茂のナップ~ンが いつ出るか いつ出るかと 心待ちにしとったそうだ。」

布美枝「ふふっ。」

修平「子供の屁ながら 芸の域に 達しておったんだなあ。 おかしな子供だったが そげやって 人と違う事を やっとった事が 漫画を描く仕事に 繋がったのかもしれんよ。 あいつの漫画や よう描けちょる。」

布美枝「はい。」

修平「子供は… そのうち なんとか な~わ。 ハハハ…。」

布美枝「はい。」

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