連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第118話「妖怪いそがし」

仕事部屋

布美枝「気をつけて下さい。 あ 足下も…。」

相沢「菅井さん それ 急がないと。」

菅井「はあ また点々か…。」

(目覚まし時計の音)

茂「時間だ。 来るぞ~!」

編集者1「先生 出来てますか?! あ~っ まだ 出来てない!」

茂「あんた もう少し待ちなさい。」

編集者1「大変だあ これは落ちる。 これは落ちますよ~!」

茂「うるさい!」

布美枝「もう 戻りましょう…。」

畑野「は はい。」

修平「おや? 松川さん おらんぞ。」

光男「来週ですか。」

修平「光男 松川さん どげした?」

光男「もう帰ったぞ。 来週は 締め切りが 4本あってですね…。」

修平「う~ん もう! せっかく一張羅に 着替えてきたのに。」

絹代「あなた 掃除の途中で 何をしとるんですか?! また いらんおしゃれして! はっ 美人が来ると もう すぐ これだけん!」

修平「誰か 来とったかいなあ?」

編集者1「先生 お願いしますよ。」

茂「あんた 背後霊じゃあるまいし 後ろに立たんでください。」

菅井「あ~ 点々で 目が回る…!」

相沢「品川君 これ 消しゴム。」

品川「はい。 ここの効果線も よろしく。」

布美枝「もう行きましょう。」

畑野「あ はい。」

絹代「あらっ 布美枝さん この人 どなたかね?」

畑野「ああ…。」

客間

畑野「なかなか個性的な ご家庭ですね。」

布美枝「締め切り前は 特に慌ただしくて。」

畑野「ああ。」

布美枝「あっ!」

畑野「まあ!」

布美枝「喜子ったら…。」

布美枝「主人の漫画が載っとる雑誌 毎日 送られてくるもんですから。」

畑野「教育上 よろしくないものは なるべく 子供さんの手の届かない所に。」

布美枝「はい。 すいません。」

畑野「でも あんなに お忙しくては たまの家族サービスも大変ですね。 お仕事の合間を縫って 連休は ご家族で 高尾山に登られたんでしょう?」

布美枝「高尾山…?」

畑野「藍子さん 上手に書いていましたよ。 『私の家族』というタイトルで みんなに 作文を書いてもらったんですが…。」

畑野「妹さんと展望台で望遠鏡を 取りあったところとか 売店で アイスクリームを食べた話とか よく書けてます。 学校でも これぐらい 元気があると いいんですがね。」

布美枝「あの…。」

畑野「はい。」

布美枝「その作文 見せてもらえますか?」

畑野「え?」

すずらん商店街

智美「お父さんに頼んで しばらく お化けの漫画 描くの やめてもらったら?」

藍子「え…。」

智美「学園漫画とか スポーツ物なら きっと あんまり からかわれないよ。」

藍子「そんな事 頼めないよ。 お父ちゃんに悪いもん。」

智美「お母さんから 言ってもらったら どうかなあ?」

藍子「無理だよ。 仕事のことには お母ちゃんだって 口出しできないから。」

智美「そうか…。」

藍子「心配かけるのも 嫌だし。」

智美「藍子ちゃんも 苦労するね。」

藍子「うん…。」

水木家

台所

布美枝「今日 畑野先生に お父ちゃんの 仕事部屋まで見られてしまった。 修羅場の大変なところ。」

藍子「え~っ 嫌だなあ…。 先生 何か言ってた?」

布美枝「『大変な お仕事ですね』って。」

藍子「ふ~ん。」

布美枝「ねえ 藍子。」

藍子「何?」

布美枝「あんた 作文に 高尾山に 行った話 書いたでしょう? 先生 褒めとったよ。 『よう書けとります』って。 けど… お母ちゃん びっくりしたなあ。 高尾山 行った事ないもん。 なして そんな話 書いたの?」

藍子「だって 買い物もしない デパート巡りの話なんて 書いても面白くないでしょ。 前に 智美ちゃんから聞いたんだ。 家族みんなで 高尾山に登った話。 そっちの方が 面白く書けそうだったから。」

布美枝「けど 作文は 本当の事 書くもんでしょ。 嘘 書いたらいけん。」

藍子「何で? お父ちゃんだって 本当は いない 妖怪や お化けの話 漫画に描くじゃない。」

布美枝「それは…。」

藍子「私 宿題あるから 行くね。」

布美枝「あ ちょっと…。」

藍子「何?」

布美枝「学校で 何かあったの?」

藍子「何かって?」

布美枝「楽しくやっとる?」

藍子「先生 何か言ってた?」

布美枝「ううん。 あんたが 学校の話あんまりせんから どうかなあと思って。」

藍子「学校であった事 いちいち 話しても しかたないよ。」

回想

畑野「学校にいるのが つまらなそうに 見えるんです。 居心地悪そうに見えるのが ちょっと 気になりまして。」

回想終了

布美枝「どげしたんだろう…。」

仕事部屋

布美枝「あの…。」

茂「私の家族が 食えるか 食えないかが問題なのです。」

布美枝「えっ!」

茂「ここは もう一捻り してみるか。 う~ん。」

布美枝「びっくりした。 漫画のせいりふか…。 とても 言えんな。 また 後にするか…。」

客間

(犬のほえる声)

布美枝「おい お母ちゃん。 ちょっこし来てくれ。」

玄関

布美枝「どうしました?」

茂「俺は 誰だ? 村井茂だな。」

布美枝「ええ…。」

茂「ここの家に住んどる 漫画家の 水木しげるに間違いないよな。」

布美枝「はい!」

茂「それ見ろ。 俺のどこが怪しいと言うんだ。」

警官「はっ 大変 失礼いたしました。 本官の勘違いでありました。」

茂「分かれば帰ってよし!」

警官「はっ。 では こちらに お名前を お願いします。」

茂「名前? 疑い 晴れたのに なぜ 名前 書かされるんだ!」

警察「サインを お願いします。 子供が ファンなもので。」

茂「ああ…。」

警官「タケシ君へと…。」

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