茂「おい チョビひげ! お前 どうせ また 怪しげな商売に 手 出しとるんだろう。」
浦木「チョビひげ… 失敬だな! 今は これの広告戦略を任されとる。」
茂「おっ 最新式のミニ計算機か!」
浦木「おっと 商売もんだ 触るなよ。」
布美枝「売れてるんですよね。 テレビで コマーシャル見ました。 ほんなら あれも 浦木さんが…?」
浦木「まあ ちょっと違いますが。 あっ! おい!」
茂「何だ これ。 オモチャじゃないか! 」
浦木「おっ お前 壊すなよ。 大事な商売もんだ。 向こうは 1万2,600円 こっちは 980円。 同じ計算ができて たまるもんか。」
茂「そんな事だろうと思ったわ。」
浦木「子供のオモチャには ちょうど いいんだよ。」
茂「あ~ くだらん。 あ~ くだらん! もう 用がないなら 帰れ!」
浦木「待て。 これの宣伝戦略を 練っとる時にな いい考えが ひらめいたんだ。」
茂「ん?」
浦木「鬼太郎マッチに 鬼太郎たわし 鬼太郎湯たんぽに 鬼太郎腹巻き! 何でも 『鬼太郎』をつけて 売り出そう。」
茂「はあ~。 もう アニメ会社や 何かが入って いろんな物を売っとるわ。」
浦木「好き勝手に やらせとったら いけん。 俺に任せろ。 商品開発から広告宣伝まで 一手に引き受ける。 どうだ 俺と組んで 一稼ぎしてみんか?」
茂「誰が お前と…。」
浦木「聞いとるぞ~。 現代漫画社が倒産して かなりの 赤字を出しとるそうじゃないか。 心配すんな。 俺は 安く作れる所を なんぼでも知っとる。 制作コストを うんと低く抑えて 利ざやを稼いで…。」
茂「だらっ! お前 『少年戦記の会』の時も 粗悪品の模型で さんざん 人に迷惑かけといて 10年 経って また 同じ事する気か?」
浦木「いや 待て。 10年前はな 早すぎたんだ。 ようやく 時代が 俺に追いついた。 まさに 好機の到来だ!」
茂「俺は 今 まさに 粗悪品の『鬼太郎』商品で 迷惑しとるとこだ! ああ~っ!」
浦木「何だ?」
茂「さっさと帰れ! あれ? お前 いつの間に そんな術を…?」
浦木「術?」
布美枝「お父ちゃん?」
茂「あ? お母ちゃんまで…。」
浦木「おおっ! ゲゲ どうした?」
布美枝「お父ちゃん!」
浦木「ゲゲ!」
仕事部屋
光男「過労か…。」
布美枝「はい。」
菅井「先生 働きすぎだもんなあ。」
相沢「漫画以外にも 取材とか 記事の原稿とか 随分 受けてましたからねえ。」
布美枝「お医者さんには 『3~4日 休むように』と言われました。」
光男「調子 悪かったんだろうに。 兄貴 そういう事は 全然 言わんからなあ。」
布美枝「すいません 私が気づかんもんで…。」
光男「いや 『休め』と言ったところで どうせ 聞く耳 持たんから…。 後の事は こっちで なんとか しますわ。 しばらく ゆっくりするように 言って下さい。」
布美枝「よろしくお願いします。」