連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第18話「たった五日で花嫁に」

2階

哲也「ちょっと ええか? すっかり 片づいたな。」

布美枝「うん。 明日 持っていくもんは 全部 これに詰めた。」

哲也「布美枝 ネクタイの結び方 知っちょ~か?」

布美枝「ネクタイ? 結んだ事ないけど…。」

哲也「明日 お前が嫁いでいく相手は 片腕がない。『何でも できる』言っても ネクタイは 片腕では結べんけん。」

布美枝「ああ。」

哲也「お前が 結んでやらなけりゃいけんぞ。 俺が 練習台になるけん。」

布美枝「はい。 上から くるっと回して…。」

哲也「結び目の形を整える。 ええな?」

布美枝「うん ネクタイか… 気づかんかったな。 旦那様が不自由してたら 私が力にならんと いけんね。」

哲也「ああ。」

布美枝「だんだん。」

哲也「気づいたのは おやじだわ。」

布美枝「え?」

哲也「『布美枝に ネクタイの締め方 教えてやれ』と おやじが言ったんだ。 自分で教えれば ええもんを…。」

布美枝「お父さんが…。」

哲也「照れくさいのかもしれんな。」

飯田酒店

布美枝「何しとるの?」

源兵衛「ん? 明日 出す酒 選んどる。 酒屋が よそから 酒を買う必要は ないけん うちから持っていく。」

布美枝「はい。」

源兵衛「村井の一族は 飲めんと 言うとったけん ええ酒 出しても 味は分からんな。」

布美枝「うん。」

源兵衛「なら 酒は2級酒で ええか。」

布美枝「え~っ!」

源兵衛「冗談だ。」

布美枝「お父さんでも 冗談 言うんだ。」

源兵衛「だらず。 お前の晴れの日だけん 一番 ええ酒を 出してやる。 どげだ… ピカピカの特級酒だ。」

布美枝「さっき… 兄さんが ネクタイの結び方 教えにきてくれた。」

源兵衛「おう。」

布美枝「お父さんが 気が付いてくれたんだってね。『片手じゃ ネクタイ 結べない』って。」

源兵衛「旦那さん 他にも できん事が あるかもしれんぞ。」

布美枝「うん。」

源兵衛「最初は… 苦労するかもしれん。 慣れん土地で… わしらには 分からん 漫画家いう 仕事をしとって しかも 片腕だ。 楽は できんかもしれん。 だども 人生は その先が 大事だけんな。 40年 50年… 一緒に生きた果てに これで よかったと思えたら それで ええんだ。」

布美枝「うん。」

源兵衛「あの男は なかなか ええ。」

布美枝「お父さんは どこが気に入ったの?」

源兵衛「食べっぷりだ。」

布美枝「えっ?」

源兵衛「あげん うまそうに 朗らかに 遠慮も何もなしに 飯を食う人間は なかなか おらんわ。」

回想

茂「ああ~。」

回想終了

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