絹代「もうっ 肝心の新郎は ど…! どこへ行ったんだかいねえ?!」
神主「ですけん 祝詞というのは 万葉時代の古語を使っとる訳です。」
茂「なるほど。 神様は 大昔の方々ですけん 古い言葉が通じるいう訳ですな。」
神主「ああ。 あんたは 分かりがいい!」
(2人の笑い声)
絹代「しげさん! こげな所で 何をしちょ~の 新郎のくせに ウロウロして!」
茂「今 行くけん。」
神主「あ あんた 新郎ですか…。」
茂「神事は 謎に満ちとって 実に 面白いですなあ。 大変 勉強になりました。」
絹代「早こと 履き替えなさい!」
茂「あ~ もう もう もう。」
絹代「すいませ~ん! 早こと!」
茂「分かっちょ~。」
絹代「ほんに このだらずが…。 はいはい!」
輝子「あちらの お母さん… 何しとるんだろう?」
(戸の開く音)
布美枝「あ 叔母ちゃん 来てくれてありがとう。」
ミヤコ「お店 忙しいのに 悪いねえ。」
輝子「店より こっちの方が ずっと気がかりだわ。 見合いしたかと思ったら いきなり『結婚 決めた 式は5日後だ』って言うだけん。 びっくりしたわ!」
ミヤコ「あれよあれよという間に 話が進むもんだけん。」
輝子「しかも すぐ東京に行くだなんて お祝いしてあげたくても 何もできんがね。」
布美枝「ええのよ。 式に来てくれるだけで うれしいわ。」
輝子「きれいに できとるよ! おめでとう 布美枝!」
布美枝「…ありがとう。」
係の人「失礼します。」
ミヤコ「はい。」
輝子「あ…。」
係の人「では そろそろ。」
ミヤコ「お願いします。 はい はい 大丈夫。 ね。 お願いします…。 えっ?」
輝子「姉さん ほんに大丈夫なの?」
ミヤコ「え?」
輝子「あの人が婿さんで…。」
回想
茂「あ~。」
絹代「ほんに この だらずが!」
回想終了