<婚礼の夜 布美枝は 境港の村井家に 泊まり 翌朝 茂と 東京に向かう事に なっていました>
修平「それでは 先に 失礼さしてもらいますけん。」
源兵衛「何かと よろしくお願いします。」
絹代「それじゃ。」
布美枝「行ってきます。」
源兵衛「うん。」
茂「(うめき声)」
村井家
茂「ああ… 気分 悪い。」
布美枝「大丈夫ですか?」
茂「俺 ちょっと 横になってくるわ。」
布美枝「え?」
布美枝「すいません。」
修平「いや…。 (ため息)」
絹代「さあさ! 布美枝さん お腹 すいたでしょう。 ああ! ええけん ええけん 花嫁さんは 1日 何も 食べられんけん。 どうぞ 召し上がれ。」
布美枝「ありがとうございます。」
修平「婚礼の晩に 芋はなかろう? 他に ごちそうはないのか?」
絹代「ええんです。 茂は 子供の頃から 芋が大好きでね。 毎日 釜いっぱい ふかして おやつに 食べさせたんだわ。 南方から復員してきた日も 芋を いっぱい ふかして 待っとったのよ。 だけん 今日は どげな ごちそうよりも ふかし芋が ええと思って。」
布美枝「はい。」
絹代「これ 復員してくる前に 茂が送ってきた 葉書。 片腕で戻って 驚かしたらいけんと思って 先に 知らせてきたんだわ。」
修平「命を落とした人も いっぱい おるのだけん 生きて戻っただけでも幸運だと わしは 思うとる。」
絹代「茂を よろしく頼みますね。 あげな息子だけど 仲よくやってごしなさいね。」
布美枝「はい。」
絹代「よろしくお願いします!」
布美枝「こちらこそ ふつつかな嫁ですが 末永く よろしくお願いいたします。」
絹代「末永く!」
布美枝「こちらこそ!」
絹代「どうか どうか!」
修平「おう! 2人とも ええ加減にせえ。 (笑い声)」
絹代「さあ さあ 食べて 食べて!」
布美枝「はい。」