(置き時計の時報)
(ペンを走らせる音)
布美枝「まだ お仕事しとられる…。」
仕事部屋
茂「タッ はあ…。 はあ よし。 5ページ出来た。 はあ 朝までに 3ページやらんと どうにもならん。 ハックション! ゴホゴホ! ああ 火鉢はあれど 炭はなしか…。 はあ 明日は 猫でも捕まえて あんかの代わりにするか…。 フウ~。」
2階
布美枝「おばば。 しばらく ここで 我慢しちょってごしなさい。 旦那様が お仕事しとられるのに 先に寝る訳には いかんよね…。」
回想
茂「1週間も帰省したのが 致命的でした。」
回想終了
布美枝「何だか… 結婚した事 後悔されとるみたい…。 ♬『埴生の宿も わが宿 玉の装い うらやまじ 大塚のみんな… もう 寝たかなあ…。」
<不意に 寂しさが 込み上げてきました>
布美枝「しっかりしなきゃ。 ここで やっていくって 決めたんだけん。」
<もう 後戻りはできません。 でも 独りぼっちの寂しい夜が 東京暮らしの始まりかと思うと 布美枝は 少し 情けなく なってくるのでした>