連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第2話「ふるさとは安来」

道中の森

少年「ほれ! 遠慮せんで 食え。」

布美枝「けど 早(はや)こと 帰らんと。」

少年「腹ペコで歩いちょ~と 『ひだる神(がみ)』に 取りつかれ~ぞ。」

布美枝「『ひだる神』って 何?」

少年「腹を減らした者に取りつく 妖怪だが。」

布美枝「取りつかれたら どげんなるかね?」

少年「動けなくなる。 行き倒れだな。」

布美枝「怖いが。」

少年「大丈夫。 芋を食うとれば 怖い事ないけん。」

布美枝「そげなもん ほんとに おるかね?」

少年「おるよ。 『べとべとさん』も『ひだる神』も 目には見えんけど ちゃんとおる。」

布美枝「見えんけど おる。 あの音も そうかな? どすんどすん バラバラと 天井から 音がしたがね。」

少年「お前の家には『あずきはかり』が 住んどるのかもしれんな。」

布美枝「『あずきはかり』? それ 怖いもんかね?」

少年「ちっと騒がしいが 悪さは せんよ。 こげな恰好 しよる。」

布美枝「あんまり 怖くないがね。」

少年「うん。」

友人1「お~い! はよ来んかね。」

少年「友達が呼んどるわ。 ほんなら 俺は行くけん。 気をつけて帰れよ。」

友人2『しげ 何しちょっただ?」

少年「そこで『べとべとさん』に会ったぞ。」

友人3「しげが また 妙な事 言っちょ~だ!」

少年「ほんとの事だが。」

友人達「しげの事だけんな そげだ そげだ はよ行こ!」

(足音と笑い声)

飯田呉服店

客1「あれもええだども やっぱり こっちがええがなあ!」

客2「これ 幾らですかいね?」

源兵衛「4円50銭です。」

客1「高えなあ。 うち帰って おとうちゃんに相談してみんと 決められんわ。」

源兵衛「あは…。 ぐずぐず 見るだけ見て 何も買ってござん。 女相手の商売は これだけん 好かんわ。」

輝子「兄さん 布美枝 家におる?」

暁子「部屋には おらんよ。」

輝子「そうなら うちに来たの やっぱり 布美枝だろうか…。」

ミヤコ「まさか あの子 大塚から 一歩も出た事ないけんね。 一人で 港まで行ける訳ないわ。」

源兵衛「どっか その辺で遊んどるわ。」

ミヤコ「うん。」

登志「あれ? そげいえば 昼前から 布美枝を見ちょらん気がするね。」

ミヤコ「そげでしたかいね?」

登志「うん。」

源兵衛「お前やち 見ちょらんか?」

暁子「見ちょらん。」

源兵衛「何だ。 姉なら姉らしく 妹の面倒 見ちょれ!」

ユキエ「むちゃ言わんで。 私ら 裁縫に行っちょっただけ。」

源兵衛「ユキエ 口答えするな!」

ミヤコ「布美枝 あんたのとこに何しに…?」

輝子「それが分からんが。 店の者に これ渡して帰ったげな。」

源兵衛「キャラメル?」

登志「ああ そげいえば 今朝 朝げの支度しちょう時に 布美枝が これ持ってきて…。」

回想

布美枝「おばば ほら 皆勤賞だよ。」

登志「ああ よかったな。」

布美枝「ちっとも 聞いちょらん!」

回想終了

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