連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第30話「花と自転車」

玄関前

中森「はあ~っ… 今日も収穫なしだ。」

男「水木さん 水木さんですね?」

中森「うわっ!」

戌井「捜しましたよ。 とうとう 見つけた。 水木さん 水木さんですよね?」

中森「水木?」

戌井「水木さんでしょう?」

中森「いえ…。」

戌井「水木さんでしょう!」

居間

布美枝「置き引きの人 『今夜の汽車で田舎に帰る』って 言うとられました。」

茂「ふ~ん。 貸本のおかみさんがねえ。 なかなか ええ人のようですね。」

布美枝「お知り合いではないんですか?」

茂「俺が あの店を のぞく時は いつも 怖い ばあさんが 店番しとるんですよ。 なぜか ジロリと にらむので どうも 入りづらい。」

布美枝「ふふっ。」

茂「俺も 今度 のぞいてみるかな…。」

(玄関が開く音)

中森「村井さん 外に怪しい男がいます!」

茂「えっ?」

中森「あなたの事 捜しているようです。」

茂「俺?」

中森「あなた 名前を変えて 借金でも してるんじゃないですか?」

布美枝「えっ?!」

茂「いや そげな事はしとりません。」

中森「しかし あの うらぶれた 様子からすると 何か後ろ暗いところのある 者ですよ。」

茂「…誰だろう。」

中森「私の事を あなたと 勘違いしているようで 『聞いた住所は 確かにここだ』と しつこく 迫ってきました。 振り払いましたが また 戻ってくるかもしれません。」

布美枝「…どげしましょう。」

中森「のんきに 鍋などを つついている 場合では ないのでは…。」

茂「2階に隠れた方が ええかな。」

布美枝「そげですね。」

中森「おかしな男ですよ。 しきりに 『水木さん 水木さん!』と 私を呼ぶのです。」

茂「水木は 俺のペンネームだけど…。」

中森「えっ。 そうなんですか?」

布美枝「あっ もしかしたら お仕事を 頼みにきた人じゃないですか?」

茂「まさか。 こんな時間に こんな田舎まで 出版社の者が来るはずがない。」

中森「少し頭のいかれた 読者かもしれません。」

茂「それだ。 たまに おりますからな そういうのが。」

(ノック)

戌井「ごめんください。 こちら 水木さんのお宅ですよね?」

茂「来たっ!」

玄関

戌井「失礼します。 夜遅くに お邪魔します。 あれ 水木さんは…。」

茂「水木は 私ですが 何なんですか?! あんた いきなり。」

戌井「あ~ あなたが 水木さんですか! そうかあ そうかあ…。 あなただったんですか! よ~し。」

居間

戌井「全部 読みました! 感動しました。 あなたは すばらしい!」

茂「誰なんですか? あんたは。」

戌井「戌井です。 僕も 漫画家なんです。」

茂「え…。」

<やっとの事で 夫婦2人の静かな夜を 迎えるはずでしたが またも そこに… 漫画界の怪しい住人が 現れたのでした>

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