連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第31話「アシスタント一年生」

玄関前

布美枝「うわ! どげしました?!」

茂「いかん。 寝ぼけとって 足が絡まった!」

布美枝「え?」

茂「あ 痛っ…。 あ~ いたたた…! 痛!」

(犬のほえる声)

布美枝「あ~ 大丈夫ですか?」

居間

布美枝「あ… 青くなってきましたね。」

茂「う~ん! あ 痛~…。」

布美枝「もう 無理せん方がええですって。」

茂「そうも言っとられん。 これを届けん事には…! あ 痛っ!」

布美枝「あ~! もう ほら…!」

茂「はあ しかたない。 『1日 待ってくれ』と電報打つか…。」

布美枝「あの…。 私じゃ ダメですか?」

茂「え?」

布美枝「私 行きます。 原稿 届けに行ってきます。」

茂「目標地点は ここだ。 小さいけん うっかり見落とさんようにしえ。」

布美枝「はい!」

茂「敵は必ず原稿料を払い渋る。 あわよくば値切ろうという 作戦だが 退いてはいかん! 何を言われても受け流す。 ええね。」

布美枝「はい。」

茂「敵の作戦は決まっとる。 『近頃は 戦記物も売れんから うちも厳しいんだ』。」

(ちゃぶだいを叩く音)

茂「『もっと受けるもんを描け』。 ま いろいろ言われるが 惑わされたらいかん。」

布美枝「はい。」

茂「成功を祈る。」

布美枝「行ってまいります。」

茂「うん。」

富田書房

布美枝「この辺りのはずなんだけど…。 えっ… ここ?!」

布美枝「失礼します。」

富田「とっとと 出てってくれ おい! あんたの漫画は もう うちからは出さないと 何度も何度も言ってるだろうが!」

漫画家「そこを なんとか… 社長! お願いします 社長!」

富田「あ~あ!」

(3人のもみ合う声)

<初めて訪れた貸本漫画の出版社は 想像以上にオンボロで 漂う貧乏の気配と 怪しい雰囲気に 布美枝は 思わず たじろいでしまいました>

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