連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第31話「アシスタント一年生」

仕事部屋

(小鳥の鳴き声)

<戌井の訪問から 1か月ほどが過ぎて… 茂は 富田書房から注文を受けた 戦記物の漫画を描いていました>

茂「桜… ああ もう春だなあ。」

<相変わらず 仕事部屋にこもる 毎日です。 布美枝は そんな夫の仕事ぶりにも慣れ…>

玄関前

布美枝「行ってらっしゃい。」

<影の薄い下宿人の存在にも 余り 気にならなくなってきました>

居間

布美枝「あ… また 境港からだ。 3日前に 返事 書いたばっかりなのに。 『近頃は コーラなどという 外国の飲料が はやっているようですが 甘い飲み物は 虫歯の原因となるので…』。 コーラだって。 お母さんは 分かっとらんなあ。 うちには そげなもん買う 余裕は ありません。」

(ウグイスの鳴き声)

<今の布美枝の ちょっとした悩みは 境港に住む茂の母 絹代から 頻繁に手紙が来る事でした>

布美枝「深大寺の桜の事も もう 書いたし… 何書こう。」

(襖の開く音)

茂「富田書房に 原稿 届けてくる。」

布美枝「お疲れさまです。」

茂「(あくび)」

布美枝「徹夜ですか?」

茂「うん。」

布美枝「ちょっこし 休んでからにしたら どげです?」

茂「そうもいかん。 遅れたら 原稿料を値切る口実にされかねん。」

布美枝「そげですね。 あ 境港から また葉書が来ておりましたよ。」

茂「『元気でやっとる』と 書いといてくれ。」

布美枝「他には 何か?」

茂「いや いらん事は書かんでええ。 心配させると 毎日 葉書を書いて よこすぞ。」

布美枝「え…。」

茂「本人が乗り込んでくるかもしれん。 そうなったら やっかいだぞ。」

布美枝「はい。 あ… 行ってらっしゃい!」

茂「は~い。」

布美枝「元気で やってます… と。」

(物音)

茂「アイタ~ッ!」

(犬のほえる声)

布美枝「え?」

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