連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第33話「アシスタント一年生」

水木家

居間

茂「古本屋を回って 買ってきた。 『少年戦記の会』が うまくいけば 金も入ってくる。 そのための 先行投資だと思ってくれ。」

布美枝「随分 買ったんですねえ…。」

茂「浦木は ああ言っとったがな… 俺には かっこうのええ戦争漫画は 描けんよ。 あんた マラリアを知っとるか?」

布美枝「はい…。」

茂「これは マラリアで寝込んどった時に やられた。 ラバウルのズンケン守備隊という所に おった時だよ。 40度の熱が 何日も続いて…。」

回想

兵士「空襲だ…!」

(爆発音と兵士達の叫び声)

兵士「逃げろ! 早く!」

(爆発音と兵士達の叫び声)

茂「ああ~っ! ああ~っ!」

衛生兵「大丈夫か?! 軍医殿」

軍医「どうした?」

茂「(うめき声)」

軍医「これは 切るしかないぞ。」

衛生兵「しかし 軍医殿! 麻酔も消毒液も ここには…。」

茂「(うめき声)」

軍医「やむをえん。 このまま ほうっておいても 死ぬだけだ。 切れ~!」

茂「あ~っ!」

回想終了

茂「麻酔も 何も ないけん あんまり痛くて 気が遠くなった。 まあ 冒険活劇のように 勇ましくは いかんのだ。 それでも 俺は 生きて戻ってきたが 戻ってこられんだった者も ようけ おる…。

茂「誰にも 見られずに 誰にも 語る事も できずに 何も 華々しい事もなく散ってった…。 漫画が 売れなければ 食べては いけん。 だが… スカッとするような かっこのええ 戦争漫画は …やっぱり 俺には 描けん!」

布美枝「はい。」

茂「そこで 打開策を考えた。」

布美枝「え?」

茂「本物の迫力だよ。 他の人には まねのできん 迫真の戦記漫画を描く。 そのためには 調べ尽くして 嘘のないように 描かねばならん。」

布美枝「それで 本が必要なんですね?」

茂「うん。 家計を 圧迫するかもしれんが …どうにか頼む。」

布美枝「分かりました。 お金… 出し惜しんだら いけませんね。」

茂「ああ。」

布美枝「なんとか やってみます。」

茂「うん。 ほい 頼んだぞ!」

布美枝「はい。」

<初めて聞いた 茂の戦争の話。 茂の漫画に込めた思いが 布美枝の胸にも 重く響きました。 けれど…>

布美枝「あ~っ… ない! 全部 使っとる! これから どげしよう…。」

<はあ~あ… 家計の悩みは 一段と 深まるばかりでした>

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