連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第33話「アシスタント一年生」

2階

中森「あっ! いたたたた…。」

居間

茂「あの人を連れてきた時も お前… さも善意のような事 言っとったが しっかり 紹介料を せしめたそうじゃないか?」

布美枝「そげだったんですか?!」

茂「役得ずくでしか 動かん男だよ!」

浦木「ふん。 これは 異な事をおっしゃる。 下宿代は 家計の足しに なっとるでしょう?」

布美枝「そうですけど…。」

浦木「俺は みんなの利益を考えて 動いとるんだ。 富田社長も この話は 大乗り気だよ。 俺と社長とは すでに 信頼の絆で 結ばれとるから。」

茂「…欲の絆だろ?」

浦木「欲の絆? 大いに結構じゃないの!」

玄関前

浦木「もうちょい 上が ええね。 もうちょい上。」

茂「こげか?」

浦木「あ~ ちょい 下…。 あ~… そこで ええわ。」

布美枝「随分 仰々しいですねえ。」

浦木「目立たんと 意味がないんです。 評判が 金を生むんですよ。 よっしゃあ!」

茂「しかし 会報 作るにも 金が かかるだろう? よう あの ドケチ社長が納得したな。」

浦木「そりゃあ 向こうの懐は 痛まんからね。」

茂「えっ?」

浦木「解放は 本部で作る約束だ。」

茂「本部って…。 バカ言え! そげなもん作る金 うちには ない!」

浦木「待て! 外すな! 触るな! 手は打ってある!」

居間

浦木「格安で 譲ってもらった。」

布美枝「あ~… 年季 入っちょりますねえ。」

茂「町内の回覧板でも 作るようだな。」

浦木「おう すごいだろう。 この手作り感が ええのよ。 しかも 安上り。 小さな元手で 大きく稼ぐ。 これこそが 金もうけの極意だ!」

布美枝「あの… 切手代は どうなるんでしょうか?」

浦木「え?」

布美枝「会員様には 郵便で送るんですよね。 切手代も バカには なりませんよ!」

浦木「奥さん なかなか しっかりしてますね。」

布美枝「家計的には 大問題ですけん。」

浦木「分かりました。 切手代は 向こうに出してもらうよう 僕が 交渉しましょう。」

布美枝「お願いします。」

浦木「ゲゲ お前は 戦艦の解説図を描け。 さしあたって… 戦艦長門 伊勢 巡洋艦金剛。」

茂「おう。」

浦木「それから もう一つ 大事な話がある。」

茂「まだあるのか?」

浦木「一番 大事なことだ。 お前… もっと 勇ましく描け!」

茂「え?」

浦木「お前の戦記漫画は 暗い 話が 惨めだ。 そんな惨めな戦争漫画じゃ これからの読者は ついてこんぞ。 少年雑誌の人気戦争漫画を 見てみろ。 スリルあり 涙ありのスペクタクルだ! お前も ああいうふうに描け。」

茂「だら言うな。 あれは 冒険活劇でねえか。 都合よく 弾が飛んできて 派手な空中戦をやって 食いもんに困る事もない! あげな都合のいい戦争があるか!」

浦木「そげな事は 分かっとるよ。 …だが 売れるのは あっちだ。 現に お前の惨めな戦争漫画は さっぱり 人気が 上がらんじゃないか。 もっと勇ましいのを描け。 そうでなきゃ どん詰まりだぞ。」

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク