美智子「私が 無神経な事 言ったのが いけなかったのよね。」
布美枝「あげな事があったら 誰でも しばらくは 来にくくなりますけん。」
美智子「けど もう1か月よ。 店に来る同僚の子達に それとなく 様子を聞いてみたんだけどね 休みの日も 寮に こもってるらしいの。 この間は 工場の先輩に 突っかかって けんかしたっていうし。」
布美枝「けんかですか? 太一君が?」
美智子「すさんでるんじゃないかと思うと 心配になっちゃってね。 あ そうだ 新刊が出た事 分かるようにしとかなきゃ。」
布美枝「美智子さん 元気ないですね。」
キヨ「うん。 毎日のように来てた子が ぱったりだろ? 行き場をなくして 悪い道にでも 入らなきゃいいけどって 気にしてんだよ。」
こみち書房
美智子「よいしょ! あ…。」
布美枝「私やりますよ。」
美智子「ありがとう!」
布美枝「こちらこそ。 いつも 宣伝して頂いて。」
美智子「こうやって貼ってとけば 目につくわよね。」
布美枝「はい。」
美智子「太一君 気づいてくれるかな? やっぱり 一度 様子 見に行った方がいいかな?」
布美枝「ええ。」
美智子「でも 余計な事して また 傷つけてもいけないしなあ。 あ そうだ! ねえ 水木先生に お願いできないかしら?」
布美枝「え?」
美智子「太一君 先生の事 尊敬してるでしょう。 お目にかかれたら 元気出ると思うのよ。」
布美枝「どげでしょうか?」
回想
茂「知らん振りしとればええ。」
回想終了
布美枝「うちの人 こげな事には 意外と 冷たい気がしますけど…。」
美智子「そう? ダメかしら?」
布美枝「もう少し 待っとったら きっと ふらっと やって来ますよ。」
美智子「そうだと いいけど。」
水木家
居間
中森「うん。」
源兵衛「おい こら! 荷物を離せ この泥棒!」
中森「く… 苦しい!」
源兵衛「この空き巣が! ジタバタするな! 警察に突き出すぞ!」
中森「け… 警察?! 誤解ですよ。 私 空き巣なんかじゃありません。」
源兵衛「何を言っとる! 留守宅に上がり込んで 荷物を持ち出しとったら 空き巣でな~か! こげな つまらん物まで盗むとは!」
中森「これ 全部 私のですよ。」
源兵衛「嘘をつくな! なら 何で 担ぎ出しとるんだ?」
中森「質屋ですよ。 質屋に行くところだったんです。」
源兵衛「うん?」
中森「あなたこそ 誰なんです?」
雄一「お~い 入るぞ!」
佐知子「お邪魔します。」
雄一「あ! どうしたんだ これ? 古道具屋にでも なんのか?」
佐知子「あらら 大変。」
源兵衛「あんたら誰だ?」
雄一「はあ? 風呂入りに来たんですよ。 おい 支度しろ。」
佐知子「は~い。」
源兵衛「おい こら ちょっと待て! ここは 風呂屋ではね~ぞ!」
雄一「はあ?! あんた 誰ですか?」
源兵衛「そっちこそ 誰だ?」
雄一「兄ですよ。」
源兵衛「兄?!」
雄一「ええ。 茂の兄。」
中森「ほんとですよ。 この人 村井さんのお兄さんです。」
源兵衛「じゃあ あんたは?」
中森「私は 下宿人です。 2階を お借りしてます。」
源兵衛「下宿だと?! こげな狭い家にか?!」
雄一「あれれれれ? この長くて怖い顔 どっかで 見た事あるぞ。 写真だ! あの婚礼の時の家族写真。」
佐知子「あっ! そうね。」
源兵衛「わしは 布美枝の父だ!」