連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第51話「私、働きます」

玄関

はるこ「私 どうしても 先生に お目にかかりたいんです。」

(戸の開く音)

はるこ「水木先生!」

茂「おお! な… 何だ!」

はるこ「私です。 河合はるこです。」

茂「おお あんたか。」

はるこ「あ~ よかった。 随分 捜したんです。 『先生に お目にかからなくちゃ』って。」

茂「どげしました?」

はるこ「私 家を出てきました。」

茂「えっ また家出?」

はるこ「家出じゃありません。 父を説得したんです。 こっちで 暮らすつもりで 出てきたんです。 それなのに 力になってくれる人が いないなんて…。」

茂「ああ… ちょっと。 弱ったなあ こげな時に…。」

はるこ「先生 一体 何があったんでしょう。 訳を聞かせて下さい。」

茂「あっ! あんた ほんとに家出してきた訳じゃ ないんだな?」

はるこ「はい。」

茂「あの おやじさんが どなりこんでくる事もないな?」

はるこ「はい。」

茂「よし 上がってくれ。」

布美枝「え…。 あっ! あの…!」

居間

茂「ええとこに来てくれたよ。」

はるこ「え?」

茂「あんたに頼みたい事があるんだ。」

布美枝「あの この方は…?」

茂「お茶を いれてくれ。」

布美枝「え…。」

茂「それからな 晩飯 この人の分も頼む。」

布美枝「はい。」

仕事部屋

はるこ「先生 三海社は どうなったんでしょう? 私 どうしても 深沢さんに お目にかかりたいんです。」

茂「あの人は 入院しとる。 三海社は もう消滅した。」

はるこ「え~?」

茂「今後の事は 後で相談に乗るけん ひとまず 手を貸してくれんか。」

はるこ「これ 先生の漫画ですか?」

茂「ああ。」

はるこ「信じられない…。 私 あれから 『鬼太郎夜話』 全部読んだんです。 けど これ 全然違う…。」

茂「描き慣れんせいか どうも進まん。 そこで あんたに 手伝ってほしいんだが。」

はるこ「分かりました。 プロの手伝いが できるなんて すごい経験。 ぜひ やらせて下さい!」

茂「よし! そげなら ここ座って。 ここに こんな背景を入れてくれ。」

はるこ「もう少し 派手にしてもいいですか?」

茂「ああ 頼む。」

布美枝「入ります。 あの…。」

茂「何だ?」

布美枝「お茶を…。」

茂「そこ 置いといてくれ。」

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