連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第55話「こんにちは赤ちゃん」

茂「家財道具 売り払って 大阪までの汽車賃を作ると 言っとった。 力になろうにも… こっちも すっからかんでは どうにもならん。」

布美枝「はい…。」

茂「せめて 壮行会でもして 送り出すか。」

布美枝「ああ そげですね。 お煮しめでもこしらえましょうか。」

茂「うん。 子供がおる人は 大変だな…。」

布美枝「え?」

茂「食べさせて 着させて 学校 行かせて…。 病気もすれば けがもする。 貸本漫画 描いとっては とても 子供は養えんな…。 うちも 大いに痛手だ。」

布美枝「え… 痛手?」

茂「下宿代 ちっとは 家計の足しになっとったろ?」

布美枝「ああ… はい。」

茂「たまっとる分は諦めんといかんな。」

布美枝「そげですね…。」

茂「しんみりしとったら いかん。 仕事 仕事!」

布美枝「あ… あの!」

茂「何だ?」

布美枝「えっと…。」

茂「あ! 戌井さんにも 声かけんとな。」

布美枝「どげしよう…。 これじゃ 子供ができた事 話せんわ。 (ため息) やっぱり蓄えを作らんといけんな。」

ロザンヌ化粧品営業所

所長「そう。 おめでたなの?」

布美枝「仕事を始めたやさきに 申し訳ありません。」

所長「じゃあ 残念だけど セールスは無理ね。」

布美枝「いえ あの… お医者さんに話したら 重い物 持ったりせずに 気をつければ大丈夫だと…。」

所長「うちが 困るのよ。 万が一の事があったら 責任 取れないから。 働きたいのは分かるわよ。 これから お金がかかるものね。 でも… お客様の家で 何かあったら 一大事でしょ?」

布美枝「ご迷惑かけんように 十分 気をつけますけん。」

所長「あなた 年 幾つだっけ?」

布美枝「30です。」

所長「それで 初産だもの 大事にしなきゃ。 ね?」

ロザンヌレディ「所長。」

所長「はい。」

ロザンヌレディ「西地区の お得意様の件なんですけど。」

所長「あれね。 じゃあ そういう事でね。 おめでとう。」

ロザンヌレディ「これで お願いします。」

<働きに出る計画は 始める前に 立ち消えに なってしまったのでした>

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