連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第55話「こんにちは赤ちゃん」

浦木「失敬な。 この浦木克夫 今や 出版プロデューサーとして 一目置かれる存在よ~。」

茂「プロ…?」

浦木「これ 見てみろ。」

中森「おっ 『手相術』?! これ 大ベストセラーじゃないですか?!」

浦木「古いブームに乗って 大売れよ。」

中森「あ 『易入門』。 これも 売れてますよ。 浦木さんが 作ったんですか?」

浦木「ん~ いかにも。」

茂「うん? これ『易入門』の後に 小さく『のススメ』とあるぞ。」

戌井「あ こっち 『手相術』じゃなくて『手相の術』! 何だ ベストセラーに似せた まがいもんか。」

浦木「たまたま 売れとう本と 似たようだね。」

茂「よう 言うわ。」

浦木「ベストセラーの そっくり本を 出すぐらい 常識 常識。 中森さん これ せん別に差し上げよう。 運が開けるせ~。」

中森「はあ…。」

はるこ「ごめんくださ~い。」

茂「ん?」

布美枝「あら 今頃 誰かしら?」

浦木「回覧板でも 届けに来たんだろう。 この家に 奥さん以外の女が 來るはずないけん。 お前は 女に もてんけん。」

茂「お前に言われる覚えは ないわ。 二度も女房に 逃げられとるくせにな。」

中森「逃げられたんですか~?」

戌井「二度も?!」

浦木「あ あれは 発展的解消と言ってだな~。」

はるこ「先生!」

茂「お~ あんた。」

はるこ「先生 決まりました! 本を出すんです。 私 デビューするんです!」

(犬の鳴き声)

布美枝「何もないですけど どうぞ。」

はるこ「いただきます。」

茂「本は どこから 出るのかね。」

はるこ「若村書房です。 少女漫画専門の貸本出版社の。」

戌井「あ~あ あそこは まだまだ 元気があるねえ。」

はるこ「10回目でやっと 合格しました。」

布美枝「10回目?」

はるこ「はい。 若村書房への売り込みです。 あんまり しつこいもんだから 根負けしたみたいで。 でも 私 1冊で終わりにはしません。 がぜん ファイトがわいてきました。」

茂「食え食え。」

はるこ「いただきます! おいし~い。 私 最近 パンの耳ばっかり かじってたんです。 ご飯作る時間も もったいなくて。」

中森「同じ物 食べてても 違うもんですなあ。 私も パンの耳 かじってましたが ファイトも な~んも わきません。」

布美枝「中森さん。」

戌井「中森さん。」

はるこ「今日は 何の集まりなんですか?」

浦木「あなたのお祝いですよ。 これ あなたに差し上げましょう。 運が開ける本です。」

はるこ「はあ…。」

中森「そうですね。 その方に 差し上げた方がいい。 私には もう 占うほどの 未来は ありませんから。 『老兵は ただ 去りゆくのみ』です。」

<漫画を諦めて去っていく中森と 道を 切り開き始めた はるこ。 対照的な人生が交錯する ほろ苦い夜。 布美枝は 新しい命の事を 茂に切り出しかねていました>

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